演劇公演関連ニュース

「New Plays: Japan(新作:日本)」が 英ロイヤルコート劇場にて上演されました!

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(左から)小高知子、松村翔子、千葉沙織  Photo by Theodorah Ndlovu


2023年1月26日(木)から28日(土)、英ロイヤルコート劇場にて「New Plays: Japan(新作:日本)」が上演されました。

ロイヤルコート劇場が新国立劇場とタッグを組み、日本で実施された「劇作家ワークショップ」から生まれた、

小高知子作『真夜中とよぶにはまだはやい』(英題: Not Yet Midnight)、

千葉沙織作『その先、鬼五郎渓谷につき、』(英題: Onigorou Valley) 、

松村翔子作『28時01分』(英題: 28 hours 01 minute)


の3作品が、ロンドンにてリーディング形式で上演されました。


公演を終え帰国した3名の劇作家より、コメントが届きました。

コメント

小高知子 『真夜中とよぶにはまだはやい』

狭く苦しいわたしから、硬く小さな机から、深くやさしいひとたちのもとへ、あかるくのびやかな場所へ。目のさめるような日々でした。
どうにも意固地なわたしを、やさしく大きく揺さぶってくださった両劇場の方々、翻訳家、演出家、俳優のみなさん、お客様、すべてのひとへこころから感謝を。
本当に、ありがとうございました。
とても緻密な製作でした。劇世界にとことん向き合いました。演出家からの質問、俳優が役をからだに染み込ませていく過程を間近で見ることで、戯曲のどこに関節をこしらえ、どこに筋肉をつけておけばいいのかということを学びました。
みなさま。必ずまた劇場で会いましょう。お気に入りの服で参ります、ていねいに耕した言葉たちをたずさえて。

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Photos by Theodorah Ndlovu




千葉沙織 『その先、鬼五郎渓谷につき、』

今もなお、朽ちてゆく故郷の家と避難先とを行き来する人がいる。故郷への帰還を夢見ながら、その生涯を終えた人を知っている。日本特有の民話をベースに震災・原発事故後の福島が、自分の作品が、どんな風に届くのか楽しみでもあり、正直怖くもありました。けれど、演劇は国境を軽やかに飛び越えてしまうのだということを目の当たりにしました。ロイヤルコート劇場は、演劇を最初に生みだす「劇作家」の為の劇場。まず一番驚いたのは劇場スタッフ内における女性の多さ。そして演出家と俳優、劇場と観客、その"空間"を共有する人たちの関係性が本当にフラットで、オープンマインドで、何より正直で、なんて心地よい空間なのかと思いました。その憧れを、日本で少しでも還元することが演劇への恩返しかなと思います。

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Photos by Theodorah Ndlovu



松村翔子 『28時01分』

三作品とも大好評のなか無事に幕を閉じることができました。それぞれの脚本には、日本独自の文化や会話の繊細なニュアンスが含まれていましたが、ロンドンの観客の方々は非常に興味深く見てくださり、物語の細かいところまでしっかり伝わっていたように思います。3日間という短いリハーサルの中で、翻訳家・演出家・俳優全員と台本への理解を深めイメージを擦り合わせていく作業はとても大変でしたが貴重な体験となりました。今まで日本で活動してきて、自分で書いた台本について細かく疑問を投げられたり指摘されたりする経験はあまりありませんでした。今回、言語・文化の異なる人たちと接することで、改めて自分がどういう意図を持って一つ一つの言葉を書いたのかを考え直す良い機会となりました。

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Photos by Theodorah Ndlovu


作家プロフィール


小高知子 (こたか・ともこ)

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大阪市出身。

2014年、伊丹想流私塾にて劇作をはじめる。

2016年『さよならあかるい尾骶骨』が第7回近松賞最終候補、2019年『光の中で目をこらす』が第24回劇作家協会新人戯曲賞最終候補となる。


千葉沙織 (ちば・さおり)

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1984年、福島県富岡町生まれ。

円演劇研究所で演劇を学んだ後、フリーの俳優として活動。

2011年の東日本大震災と原発事故をきっかけに、劇作を始める。

新国立劇場×ロイヤルコート劇場の劇作家ワークショップが、劇作家として初めての活動となる。


松村翔子 (まつむら・しょうこ)

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劇作家・演出家・俳優。2000年より舞台俳優として東京の小劇場を中心に活動。2013年に演劇ユニット「モメラス(Momeraths)」を旗揚げし、劇作・演出を始める。自身の体験や関心をもとにリサーチを重ね、社会的に不利な立場にある若者や、女性の人生における問題、現代を生きる人々の闇に焦点をあてた作品を多く展開している。(非正規雇用、貧困、性被害、中絶、不妊治療、出産 他) 観客の想像を超えた方向へ飛躍する物語や、詩的言語や身体表現を用いて、現実を超えた「新しいリアル」を舞台上に表出させている。



公演概要

真夜中とよぶにはまだはやい Not Yet Midnight

作 小高知子

翻訳 鈴木小百合
演出 Dadiow Lin
出演 James Bradwell, Hanako Footman, Yojiro Ichikawa, Meg Kubota, Kirsty Rider

とある夜の停電が街中に一時停止の瞬間を生み出す。

3人の会社員は悪事のさなか。公園のカップルは謎解きを始める。そして店員は最後の客を追い出すことに失敗する。

その先、鬼五郎渓谷につき、 Onigorou Valley

作 千葉沙織

翻訳 ヒングリー・スーザン・もも子
演出 Mingyu Lin
出演 Ashley Alymann, Camilla Aiko, Nino Furuhata, Andrew Futaishi, Susan Momoko Hingley, Kumiko Mendl

福島県のある山を訪れた2人の除染作業員は、人智を超えた存在が治める世界に足を踏み入れる。

原発事故から七年後の、山深い鬼五郎渓谷で起きた怪奇譚。

28時01分 28 hours 01 minute

作 松村翔子

翻訳 鈴木小百合
演出 Ailin Conant
出演 Natsumi Kuroda, Kanako Nakano, Mark Takeshi Ota

アオジのお腹には初めての赤ん坊がいる。夜中に目覚めるアオジ。隣人のウソが蜜柑を携えて訪ねてくる。やがて、アオジの持つ「母親になること」に対する考えを試し、形作る不可思議な出来事の連鎖が始まっていく。


2023年1月26日(木)~28日(土)、英ロイヤルコート劇場にて上演

共催:新国立劇場

後援:ブリティッシュ・カウンシル



Reviews


Plays To See

★★★★☆
"Each play is unique, showcasing the playwrights' sensitivity and imaginative talent."

  • A Young(ish) Perspective
    ★★★★☆
    "New Plays: Japan leaves you seeing the world through fresh eyes, in a masterclass of new playwriting."

  • The Indipendent
    ★★★★☆
    "Indeed, it's a pleasure to see these script-in-hand performances and ideas in development, to imagine the final staging from stage directions read aloud. Both theatres benefit from this partnership, and long may it continue to blossom. "

  • time & leisure
    ★★★★☆
    Not Yet Midnight
    "there's plenty of fabulous concepts throughout - a frame with a character pondering whether they are dead yet - good humour and relatable characters."
    28 hours 01 minute
    "28 hours 01 minute is weird, absurd, bizarre, quirky, funny, tragic, shocking, unexpected, outrageous and spectacular."
    Onigoro Valley
    "This Kwaidan-esque horror story needs a little bit more stage magic to truly shine but the concept is both moving and effective. "



ロイヤルコート劇場とは


ロイヤルコート劇場は、1956年開場以来、「劇作家の劇場」として知られ、新人作家から、新進気鋭の作家、すでに十分経験のある作家にいたるまで、積極的に様々な世代の劇作家を啓発することで、世界の演劇界を牽引する劇場です。劇作家が生み出す作品を通して、現代を取り巻く社会的不安に警鐘を鳴らし、常に挑戦的な演劇作りの最前線を走り続けています。現代社会において耳を傾けてもらえない声や、より自由な発想を"劇作"という手段で表現することで、新たな視点をもたらし、社会に提示していく機会を提供し続けています。

ロンドンのスローンスクエアにあるロイヤルコート劇場には、毎年12万人以上の観客が訪れ、さらに数千人を超える人々がウエストエンドやニューヨークなど国内外のツアーやインターネットを通じて作品を観ています。それら多くの作品を通じ、革新的な考えや刺激的な問題提起で常に観客を刺激し、未来の作家たちに影響を与えようと努めています。

この60年間には、ジョン・オズボーン、エドワード・ボンド、サミュエル・ベケット、アーノルド・ウェスカー、デイヴィッド・ヘアなどがロイヤルコートでキャリアを積み始めました。その他、キャリル・チャーチル、アソル・フガード、マーティン・マクドナー、サイモン・スティーヴンス、サラ・ケイン、最近では、ルーシー・カークウッド、ニック・ペイン、ペネロペ・スキナー、アリスター・マクドーウォルらが追随しています。

この度日本で開催された劇作家ワークショップ(ロイヤルコート劇場インターナショナルプログラム)は、これまで70か国、40言語以上で実施されており、このプログラムを通して、世界中の劇作家たちと、長期に渡り作品作りに取り組むことで強い絆を築いてきました。これまで開催された主な国々として、アルゼンチン、ブラジル、中国、チリ、キューバ、ジョージア、ドイツ、インド、イラン、メキシコ、パレスチナ、ロシア、南アフリカ、シリア、トルコ、ウクライナ、ウルグアイ、ジンバブエなどがあります。



「ロイヤルコート劇場✖新国立劇場 劇作家ワークショップ」とは


詳細: https://www.nntt.jac.go.jp/play/playwrights_project/


「劇作家の劇場」と呼ばれるロイヤルコート劇場。60年以上の歴史を持つこの劇場は「新作戯曲のナショナルシアター」として数多くの若い才能を生み出してきました。このロイヤルコート劇場が世界中で行っている劇作家のためのワークショップを、新国立劇場とロイヤルコート劇場が手を携え、日本で初めて開催しました。

ロイヤルコート劇場からアソシエイトディレクター、文芸マネージャー、劇作家が来日して行ったワークショップには、これからの日本の演劇界を支えていく若い世代の劇作家たちが多く参加しました。 2019年5月から2021年2月までの1年9ヶ月の間に開催された3段階のワークショップを経て、様々なアプローチを経験しながら、参加者それぞれが新作戯曲を創り上げました。

主催:新国立劇場、ロイヤルコート劇場

共催:ブリティッシュ・カウンシル