天守物語

  • 2011/2012シーズン
  • 【美×劇】─滅びゆくものに託した美意識─V


    【美×劇】―滅びゆくものに託した美意識―
    (「朱雀家の滅亡」「イロアセル」「天守物語」)
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  • 中劇場

シリーズ「【美×劇】 ─滅びゆくものに託した美意識─」の三作目には『天守物語』を取り上げる。1917年に発表された泉鏡花の『天守物語』は圧倒的な言葉の魅力で夢幻の世界を描き、これまでも新派、映画、歌舞伎、オペラなど様々な形で上演されてきた。
播州姫路の白鷺城に棲む美しい妖怪・富姫と、若く凛々しい鷹匠・図書之助との恋物語。大正の新時代を迎えて円熟期に入った鏡花の戯曲の中でも、永井荷風や芥川龍之介ら反自然主義作家の熱烈な支持のもとに、その個性をいかんなく発揮した傑作。
細やかで丁寧な演出力で、数々の難戯曲を具現化してきた白井晃を演出に迎え、2011年秋、中劇場に新たな『天守物語』の世界が誕生する。

ものがたり

武田播磨守の居城、白鷺城の天守閣。巨大な獅子頭がすえてある最上階には、魔界の者たちが住んでいる。今宵は天守夫人・富姫の親しい友・亀姫がやってくるというので、腰元たちは歓待の準備に大わらわ。
亀姫の一行が到着し、楽しいひと時を過ごす魔物たち。亀姫は手土産の男の生首を披露する。それはこの白鷺城の城主・播磨守の兄弟で、猪苗代亀ヶ城の城主・武田門之介の首だった。亀姫がそろそろ帰ろうとするところへ、城主・播磨守が鷹狩りから戻ってくる。播磨守自慢の白鷹をすっかり気に入った亀姫。富姫は白鷺に化けて羽ばたいてみせ、それに釣られて飛んで来た白鷹を捕らえて亀姫に進呈する。
日はとっぷりと暮れ、富姫が一人獅子頭の前に佇んでいると、灯りを手にもった一人の若者が現れる。その若者は播磨守の鷹匠・姫川図書之助(ずしょのすけ)と名乗り、白鷹を逃がしたために切腹させられるところ、だれも恐れて登ろうとしない天守に白鷹の行方を捜しにいけば一命を助けようといわれたと語る。
富姫は心がまっすぐで凛々しい図書之助を一目で気に入ったが、天守へ登ってくる者は生きて返さない掟なので、二度とここへ来てはいけないと諭して帰す。しかし雪洞の灯りを大蝙蝠に消されてしまった図書之助が火をわけてほしいと戻ってくる。
もはや図書之助を愛おしく思う富姫は、彼を帰したくないと告げるが、図書之助は迷いつつも地上に戻ることを選ぶ。富姫は自分に出会った証拠として、さきほどの播磨守秘蔵の兜を渡す。
しかし図書之助は、兜を盗んだという疑いをかけられ三度、天守にのぼってくる。無実の罪で殺されるくらいなら、天守に登った罪で姫の手にかかって死にたいと。
追手に囲まれる富姫と図書之助。二人は獅子頭の中へと逃げ込むのだが……。