ピーター・グライムズ

  • 2012/2013シーズン
  • [新制作]
    Benjamin Britten : Peter Grimes
    ベンジャミン・ブリテン/全3幕
    【英語上演/字幕付】

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  • オペラ劇場

荒涼とした海と胸に迫る人間ドラマ。20世紀イギリス・オペラの傑作がついに登場。

20世紀の偉大なオペラ作曲家の一人に数えられ、2013年には生誕100周年を迎えるベンジャミン・ブリテンの『ピーター・グライムズ』で尾高芸術監督による第3シーズンは幕を開けます。英国人作曲家の中でブリテンは圧倒的にドラマ重視の特徴を持っています。彼が書き残したオペラの中で2作目となる『ピーター・グライムズ』は、彼の代表作であると同時に、日本人に理解しやすい作品です。漁村を舞台とした閉塞的な社会に生きる主人公たちの過酷な運命。この物語について尾高芸術監督は、悪役ととらえられがちなピーター・グライムズを、悪役ではなく彼を取り巻く村民の在り方が問題なのだと語っています。イングランド東部サフォーク州のオールドバラで、パートナーとして半生をともに過ごしたテノール歌手ピーター・ピアーズとの同性愛のために、周囲から冷たい目で見られていた作曲家自身の境遇と重ね合わせて考えることができるからです。
新国立劇場オペラ初のイギリス・オペラで注目のタイトルロール役を演ずるのは、ヘルデン・テノールとして世界で活躍するスケルトン。主人公の唯一の理解者であるエレン役には本役をレパートリーとして活躍するイギリス人ソプラノのグリットン。そして国内外の実力派歌手たちがアンサンブルを固めます。さらにポイントとなるのが、新国立劇場では08年『軍人たち』公演で大きな話題となったデッカーの演出で、ベルギー王立モネ劇場から舞台装置・衣裳・小道具をレンタルし上演します。数ある演出の中でも、1994年に初演されたこの演出が、最も作品の深いところを伝えていると尾高芸術監督が高く評価したプロダクションです。2004年3月にはモネ劇場の音楽監督を務めていた大野和士が指揮して好評を博しており、同年7月には英国ロイヤルオペラで上演され、翌年のローレンス・オリヴィエ賞の新作オペラ部門にノミネートされた秀作です。

ものがたり

1830年頃、イギリス東部の北海に面した漁村。集会所で漁師ピーター・グライムズの裁判が行われている。見習いの少年を連れて出た漁で、大漁を当てたが嵐に遭い少年を死なせてしまった罪に問われていた。ピーターは、偶然の事故であると無実を主張するが、普段から気性が激しく付き合い下手なピーターに対して、村人たちは疑惑の念を持っている。判定は事故死となるが、徒弟を受入れることを禁じられる。村の女教師で未亡人のエレンや、退役船長バルストロードがピーターを慰める。この事件以来、ピーターは村人たちから疎外されていたため、一人きりで漁もままならない状態となった。見かねたエレンは、孤児院からピーターの徒弟として少年を一人連れてくると、村のパブ“ボーア亭”でピーターに受け渡す。ある日曜日、エレンはピーターの徒弟となった少年の衣服や体を見て不審に思いピーターに問いただすが、彼は安息日にもかかわらず少年を連れて海に出ようとする。ピーターはエレンとの結婚を夢見ていたため、できる限り金を稼ごうとしていた。エレンや村人達の反対を押し切ったピーターは、家の裏手から崖づたいに海岸へ降りるよう少年に命じるが、少年はあやまって墜落死する。数日後、村人の間で、行方不明のままの少年もまたピーターに殺されたのではないかと噂が広がる。再び捜査が始まる。疲れ果てたピーターが現れる。バルストロードは、海の男らしく船と運命を共にせよと諭す。エレンは止めるが、ピーターは船を出す。翌朝、沈没船の知らせが村に届くが、これに関心を示す者はなく、何事もなかったかのように一日が始まる。