イタリアのオペラ作曲家ジョルダーノによるヴェリズモ・オペラの代表作ですが、上演機会がきわめて少ない作品です。2005年11月のプレミエは日本国内上演史上、3つ目のプロダクションとなりました。パリ生まれパリ育ちのフィリップ・アルローは、フランス革命期のパリを舞台にした作品の演出にあたり、登場人物たちの心にはぐくまれる《愛》で物語を進行させつつ、混乱状態の中で命を落とした多くの人々の存在を舞台上に視覚化することに成功しました。ギロチンで区切られた各幕の舞台は、世相を象徴する絵画がイメージ素材となっています。第1幕はロココ時代のフラゴナール、第2幕はドラクロワの「民衆を率いる自由の女神」、第3幕はゴヤの暗く重いイメージ、第4幕にはロマン主義絵画を代表するカスパル・ダーヴィト・フリードリッヒの世界が展開します。暴力が暴力を生む歴史の連鎖を断ち切る可能性について、現代を生きる私たちに問いかけているのです。パリ生まれの指揮者フレデリック・シャスランによる流麗な音楽づくりにもご期待ください。
1789年のパリ郊外。コワニー伯爵邸の夜会で、伯爵令嬢マッダレーナは無口な詩人シェニエが披露した愛の崇高さと憂国の情を情熱的に歌った即興詩に感動する。一方、マッダレーナに思いを寄せる伯爵家の従僕ジェラールもシェニエの詩に感動し、階級社会への不満を爆発させて伯爵家を飛び出す。5年後、ジェラールは革命政府の高官に昇りつめている。マッダレーナは侍女のベルシと共に零落し、革命政府に批判的なシェニエは密偵に狙われている。二人は監視の目をくぐりぬけて再会し愛を確かめ合うが、マッダレーナを探すジェラールによってシェニエは捕らえられ革命裁判にかけられる。マッダレーナはジェラールにシェニエの助命を懇願。ジェラールは自分の横恋慕を恥じ、シェニエの弁護に回るが受け入れられず死刑判決が下る。ジェラールの計らいでマッダレーナは女死刑囚の身代わりとなってシェニエが囚われている監獄へ入る。再会を歓ぶ二人は、永遠の愛を誓いながら断頭台へ運ばれていく。