舞踊芸術参与 吉田都からのメッセージ

このたび、次シーズン開幕作品に予定していた『白鳥の湖』の新制作を、来年秋に延期することが決定いたしました。新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大する中、何とか今秋の実現に漕ぎつけようと道を模索してまいりましたが、海外との連携協力はもとより、国内での準備作業もままならず、苦渋の決断となりました。新制作を楽しみにしてくださっていた皆様には、心よりお詫びを申し上げます。

私自身、この演目で芸術監督としての第一歩を踏み出せる日を心待ちにしておりましたので、残念な気持ちもありますが、来年秋に、より満を持して皆様のお目にかけられるよう、引き続き準備を進めてまいりますので、どうか温かいご支援とご理解を賜れましたら幸いに存じます。

芸術参与として劇場に携わりながら、ここ数ヶ月間、満足に稽古もできない日々が続くバレエ団の苦しい状況を目の当たりにしてきました。劇場とダンサーを取り巻く環境の厳しさに改めて直面し、日々不安と戦うダンサーたちの力に少しでもなれるよう、私自身、気を引き締めて新たなシーズンに臨みたいと考えています。

『白鳥の湖』の上演延期に伴う代わりの演目には、世界中の人々にとって未曾有の脅威となった今回の出来事をバレエ団一丸となって克服し、大原現監督からのバトンを引き継ぐ意味も込めて、この5月に上演が予定されていた『ドン・キホーテ』を選びました。依然として先の見えない状況ではありますが、ダンサーと共に一歩ずつ励んでいく所存ですので、是非公演を楽しみにお待ちいただければ幸いです。

お目にかかれるその日まで、皆様が心身共に健康でお過ごしになられることを、そして安心して舞台をお楽しみいただける日常が一刻も早く戻ってくることを願って止みません。


舞踊芸術参与 吉田都