ダンサーインタビュー:木村優里・井澤 駿『ロメオとジュリエット』

新国立劇場バレエ団2019/2020シーズンの幕を開けるのは『ロメオとジュリエット』。

シェイクスピアの戯曲を、プロコフィエフの音楽、マクミランの振付で物語る、ドラマティック・バレエの傑作だ。

運命の二人、ロメオとジュリエットをダンサーたちがどのように演じるか、期待が高まるなか、

初役となる木村優里と井澤駿が舞台への意気込みを語る。

                                インタビュアー◎守山実花(バレエ評論家)

恋に落ちて愛しあう二人の生きる喜びを鮮烈に印象づけたい/木村優里

木村優里
マクミラン版のジュリエットを踊ることは、長年の夢でした。今回演じられることにとても感謝しています。どんなに高い壁であっても、ワクワクする気持ちを忘れずリハーサルしていきたいです。

バレエ研修所の研修生だったとき、授業で、演劇研修生の方たちと一緒に『ロメオとジュリエット』のセッションをしたことがあります。シェイクスピアの台本通りに、演劇の研修生たちは台詞、私たちは踊りで演じあうというものです。 私たちは、台詞ひとつひとつにこめられている感情を即興で踊りました。このときに、マクミランの振付だったらどの部分に当たるか、ジュリエットの振付はどの台詞に当たるのか、自分なりに分析していました。そして、もしジュリエットを踊れる機会があったら、ここはこういう風に踊りたいな、などとイメージを膨らませていました。

ジュリエットは十四歳。その時代は早婚だったとはいえ、幼さの残る少女がロメオへの愛ひとつだけで自分の命まで賭け、出会って五日後には死んでしまうのですから、演じるにためには自分の中に相当の覚悟が必要です。

死という結末を持つ、あまりにも有名な作品だからこそ、恋に落ちて愛しあう二人の生きる喜びを鮮烈に印象づけなければいけないと思っています。ロメオと出会ってからのジュリエットに起きる変化や彼女自身の持つ強さ、二人を突き動かす大きな力の存在は何なのかを考えて役作りしていきたいです。

私自身がジュリエットと同じ状況になったなら、愛する人の分まで私が強く生きていかなければ、と全てを背負って生きていこうとするだろうな、と思います。これからリハーサルを重ねる中で、ジュリエットの気持ちに寄り添い、彼女の心の変化を理解し、自分のものとしていきたいです。精神的に辛くなるかもしれませんが、そこは恐れずに進んでいきたいと思います。

パ・ド・ドゥでは、パートナーに全てを預けないと踊れない振りもありますが、ロメオ役の井澤さんを全面的に信頼していますので、不安はありません。井澤さんの美しいロメオのオーラにも助けていただいて、私なりのジュリエットをつくりあげていきたいです。

呼吸するようにお互いを理解できるそんな関係を舞台上で築けたら/井澤 駿

井澤 駿
前回(2016年)の公演では、ロメオ役をリハーサルしていたにもかかわらず、怪我のために本番の舞台で踊ることができなかったので、今回はリベンジという気持ちです。
古典バレエとは演技の仕方も踊り方も違います。ナチュラルな演技をする中で、ただの「振り」にならず、感情の深いところまで表現することが課題です。

三つあるパ・ド・ドゥは、ロメオとジュリエットの関係が描かれて、すべて違う感情を表現しなければなりません。マクミランの振付はパートナーとのタイミングがほんの少しずれただけで全く違うものになってしまいます。サポートにしても、構えて相手を待つのではなく、すっと手を出したところに自然にパートナーの身体がある、そこまでリハーサルをしっかり積み重ねていきたいと思っています。

ジュリエットを踊る木村さんは初役ですし、お互いに「挑戦」という気持ちで一緒に作品をつくっていければいいなと思います。僕を信頼して安心して踊ってもらえるように頑張らないと。呼吸するようにお互いのことが理解できる、そんな関係を舞台の上で築けたらいいですね。パ・ド・ドゥでは、無駄な動きをせず、女性をいかにきれいに見せるかも課題のひとつです。

経験が増えていくことで、バレエに対する視点も変化しはじめました。跳躍や回転で魅せるだけでなく、例えば「歩く」のも大事な表現のひとつですから、これまで以上に一歩を大切にしたいと考えています。王子役を踊るときも、この一歩で何を表現できるのか、腕の動きにどういう意味があるのか追求していきたいです。

昨年『不思議の国のアリス』でイモ虫を踊ったことはとても勉強になりました。実は倒立ができなかったので、リハーサルの一ヶ月前から練習したんです。しなやかに身体を使うことにも苦手意識がありましたが、お客様に良かったと言っていただけてとても嬉しかったです。6月の『アラジン』のジーンもそうですが、キャラクターの濃い役を演じるのは楽しく、学ぶこともたくさんあります。

『ロメオとジュリエット』が難しい作品であることはよく理解しています。コンディションをしっかり整えながら、これまでのいろいろな経験を活かし、若々しく、恋にピュアなロメオを演じたいと思っています


新国立劇場・情報誌 ジ・アトレ 9月号掲載

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新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』

会場:新国立劇場・オペラパレス

上演期間:2019年10月19日(土)~27日(日)

木村優里・井澤駿の二人の主演は10月20日(日)18:30、26日(土)13:00

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