新国立劇場バレエ団と現代舞踊を融合させる、新国立劇場ならではの公演企画。4回目を迎える今回はネザーランド・ダンス・シアターなど、ヨーロッパのカンパニーでダンサーとして活躍した後、日本で活発な創作活動をおこなっている金森穣と中村恩恵による作品を上演します。
金森は2011年「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」では、バルトークの『青ひげ公の城』『中国の不思議な役人』の演出振付を手がけて話題を呼びました。また過去二度にわたって新国立劇場バレエ団の委嘱で作品を振り付けています。中村は2011/2012新国立劇場ダンスシーズンの開幕作品として首藤康之とともに、シェイクスピア「ソネット集」を舞踊化し、その卓越した作品構成力と舞台表現が観客からも批評家からも高い評価を受けました。
金森 穣振付「solo for 2」
2009年の金森穣作品『ZONE 〜陽炎 稲妻 水の月』は、新国立劇場とりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館との共同制作で金森が芸術監督を務めるNoism によって発表されました。そこで上演された『Academic』は3部構成をとる「ZONE =舞踊芸術の専門家がその専門的活動の中で養う精神的領域」の第1部として発表されました。
「古典/制御されたからだ/記号化できる動き/緊張感のあるからだ」に焦点をあてて振り付けられた『Academic』は、クラシックバレエの様式をNoismとして専門的に表現する領域と、金森は初演プログラムノートで定義しています。
今回上演される『solo for 2』は金森が『Academic』に大幅な改定をほどこし、2012年新たなタイトルでNoism1によって発表された作品です。
◆「solo for 2」ダイジェスト映像(2012年Noism1公演「solo for 2」より)
中村恩恵振付「The Well-Tempered」
『The Well-Tempered』は2008年に初演。その後09年に改訂され、第3部のパ・ド・ドゥが中村恩恵と首藤康之によって踊られました。中村は音楽における「純正調」と近代和声の要求する多様な調性との関係を、個人と社会という人間関係に置き変えます。
社会(多様な調性)の中で個人(一つの調)の純粋を保とうとしたときに、人はどのようにその矛盾に向かい合うのか。中村はその矛盾を克服する鍵を、かつて様々な調性に対応ができるよう音楽理論家たちが考案した「Well Tempered」な音律に見出します。人と人の関係における「Well Tempered」とは何を意味するのでしょう。
作品は、純正律を志向した作曲家ペルトによる音楽で幕を開け、そして最後のパ・ド・ドゥではバッハのカンタータが用いられています。