新国立劇場 2010/2011 SEASONシーズンオペラ公演

オペラ コジ・ファン・トゥッテ|新国立劇場

貴方の恋人は誠実? 天才モーツァルトによる恋愛劇!


オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」エッセイ

人間なんてこんなもの―だからこそ面白い!モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」の魅力


女の貞節を試すため、2人の士官が変装してお互いの恋人を試す、という筋立てをもつ「コジ・ファン・トゥッテ」は、女性にとってはあまり面白いお話とはいえない。主な登場人物は士官グリエルモとフェルランド、それぞれの恋人であるフィオルディリージとドラベッラの姉妹。「女の貞節はアラビアの不死鳥のようなもの(=あり得ない)」と青年たちと賭けをする老哲学者ドン・アルフォンソ。

そして姉妹の小間使いで2人を焚き付ける役回りのデスピーナ。物語は、フェルランドとグリエルモが互いの恋人をいかに口説き落とすか、という点を中心に展開し、発展家の妹ドラベッラが先に陥落するが、フィオルディリージの方も結局は負けてしまい、入れ替わったカップルが結婚、というところで種明かしがされ、カップルは元のさやにめでたく戻る、という結末。これが現代の女性ならば「そんなに疑うばかりの男などこちらから願い下げ」となりそうだが、オペラの中の女たちは自分の浮気心を反省し、男達に永遠の愛を誓う。

このオペラのみどころは、このいささか現実離れした結末を、いかに観客に納得させるか、というところだと思う。それには、その過程でどれだけ人間が描かれているか、が非常に重要になってくる。女の貞節を疑う男心も、イイ男になびいてしまう女心も、どちらもわからないではない心理であり、その心理がリアリティをもって描き出されていれば結末も納得できるというものだ。これは演出家の力量が試されるところでもある。

また、モーツァルトが書いた音楽が、アリアよりも二重唱、三重唱、四重唱などのアンサンブルに力点がおかれている点に注目したい。男同士、女同士、そして男女の間で交わされる会話が、モーツァルトならではの美しいアンサンブルによって紡ぎ出されていくところが実に味わい深い。声高に主張するアリアよりもアンサンブルに重点が置かれていることで、より一層登場人物にリアリティを感じることができる。聴き手も思わず「そうそう、女の貞節は…」などと思ってしまうのは、この音楽があってこそなのだ。

見方によっては、このオペラほどの悲劇はない。互いに裏切り、裏切られた男女が元のさやに収まったとして、この先うまくいくのだろうか、と考えると、オペラの結末には一抹の物悲しさが漂う。オペラ自体は極上の喜劇には違いないのだが、もしかするとモーツァルトはこの作品に、どこか皮肉めいた諦めのような気持ちを抱いていたのではないか。そう、「人間なんてみんなこんなもの」という。もちろん、モーツァルトの音楽を聴いているとその続きにこうつぶやきたくなるのだが――「だからこそ面白い」。

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モーツァルトが極上の音楽で描いた大人のための恋愛劇! オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」を是非ご鑑賞ください!
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