
1997年の新国立劇場開場と同時に誕生した新国立劇場バレエ団が10年間の集大成として『椿姫』は新制作されました。ヴェルディのオペラで知られる『椿姫』ですが、この作品はデュマの原作に立ち返り、デュマと同時代のパリを生きた作曲家ベルリオーズで全曲構成されています。『ラ・バヤデール』『ライモンダ』における男女の恋愛模様を女性ならではの繊細な感性で演出してきた牧阿佐美が、文字通り壮絶な愛と死の物語を見事に描き出し、この作品で振付家として第7回朝日舞台芸術賞を受賞しました。
2009年9月のボリショイ劇場公演では、新国立劇場バレエ団の表現力・技術の高さでロシアの観客をうならせ、バレエにうるさいモスクワっ子からスタンディング・オベーションを受けました。この待望の再演公演では、初演にも勝る感動を皆様にお届けいたします。

2009年9月18日(金)~20日(日)の3日間、ロシア・ボリショイ劇場で、新国立劇場バレエ団による牧阿佐美の『椿姫』が行われました。バレエの殿堂と謳われる劇場での公演は、モスクワの目の肥えた観客たちをも唸らせる素晴らしい公演となりました。その模様をここで少しご紹介いたします。

小説家デュマには深く愛し合いながらも結ばれることのなかった一人の美しい女性がいた。『椿姫』はその物語である。
――マルグリットは、パリ社交界の華。その美貌はどんな男も虜にしてしまい、金に糸目をつけない紳士たちが次々と彼女を我がものにしようとしてきた。しかしある日、夜会で若く純粋な詩人アルマンと出会ったことで、彼女の人生は一変する。真の愛に身を捧げる決心の末、全てを捨てて二人だけの生活を選んだマルグリットだったが、アルマンの父の説得により心ならずも彼を裏切るのだった。
肺病が悪化して死期が近づくマルグリットの前に現れたアルマンは、許しを請う。
しかし、時はすでに遅く・・・