十九歳のジェイコブ

  • 2013/2014シーズン
  • [新作]
  • 小劇場

2014年6月公演

原作:中上健次
脚本:松井 周
演出:松本雄吉

終生「路地」にこだわり、人間の業やほとばしる生命への執着を描き続けた作家、中上健次。46歳という若さで急逝してから20年、彼の小説を新進気鋭の劇作家・松井周が舞台化します。演出には大阪を拠点に他の追随を許さないダイナミックな野外劇を40年にわたり展開してきた「維新派」の松本雄吉を迎え、新国立劇場・小劇場に「路地」に生きる人々を描き出す意欲作です。

ものがたり

中上健次の小説『十九歳のジェイコブ』を主人公・ジェイコブとユキとの友情、もしくは愛情の物語として戯曲化。
放浪する者たちにとっての教会であるジャズ喫茶、讃美歌としてのジャズ。ジェイコブの叔父、高木直一郎が破壊していった「路地=聖地」を失ったジェイコブは、新しい聖地を求めてさまよう。
ジェイコブとは正反対のタイプであるユキも「古き良き故郷=家族」を失い、「変わりきった故郷=父の大企業の権力下にある」に憎悪の念を抱いている。
マイルス・デイビスのSketches of Spainに郷愁を感じることもあれば、アルバート・アイラーのSpiritual unityに身を任せて空っぽになるジェイコブ。
ヤコブ(兄を出し抜いた者の意味)の英語読みであるジェイコブは兄の自殺や叔父・直一郎の冷血な振る舞いと腹違いの妹などに罪の意識を感じ、自身を汚しきることと教会=ジャズ喫茶に通うことでバランスを取ろうとしているのかもしれない。
ジャズによって呼び覚まされるジェイコブの記憶がまとわりついては去っていく追憶の物語である。