マニラ瑞穂記

  • 2013/2014シーズン
  • 小劇場

2014年4月公演

作:秋元松代
演出:栗山民也

出演:千葉哲也  山西 惇  稲川実代子
出演:古河耕史  髙島レイ  前田一世  宇井晴雄  西原康彰  藤井咲有里
出演:今井 聡  斉藤まりえ  仙崎貴子  日沼さくら  梶原 航  ほか

新国立劇場では、新国立劇場研修所修了生に多くの機会を与える公演として2013年3月に福田善之作『長い墓標の列』を企画しました。引き続き第二弾として、秋元松代の名作『マニラ瑞穂記』を上演いたします。明治半ば、理想の世界を求めてアジアへと向かった多くの人たちを中心に、時代に翻弄される日本と日本人の歴史を鋭く突いたこの作品の中で描かれる世界は、現代の日本を生きる我々にとっても決して過去の出来事ではありません。
主人公の秋岡伝次郎は、明治から昭和にかけてアジアで活躍した村岡伊平治をモデルとしています。今村昌平監督・緒形拳主演の映画『女衒』はこの村岡をイメージして描かれていますが、秋元松代自身も『マニラ瑞穂記』と別に『村岡伊平治伝』という作品も執筆しており、いかにこの村岡という人物が創作意力を掻き立てるかわかります。
『マニラ瑞穂記』、この重厚で大きな物語が、栗山演出により刺激的な舞台として蘇ります。

ものがたり

1898年(明治31年)。マニラの日本領事館には、内乱と戦争暴動化した民衆から逃げて、在留邦人が避難していた。そこには、フィリピンの独立運動を支援しようと日本から渡った志士達や、からゆきさん達がさまざまな思いを抱えながら居合わせていた。そんな中、日本領事である高崎碌郎のもとに、シンガポールで別れ日本に帰ったはずの秋岡伝次郎があらわれる……。
賤しい生業をしていても、南洋において自分が日本人であるという誇りを忘れず、天皇陛下を崇拝し、愛国精神にのっとって行動する奇妙な男秋岡。かつてシンガポールで女衒をやっていた秋岡は、高崎によって仕事を奪われ、開拓、真珠採掘、行商とさまざまな仕事については統治者によって邪魔され、フィリピンに密入国の末、領事館までたどり着いたのだった。
フィリピン独立の為に、アメリカと共闘していると信じていた志士達だが、だんだんとアメリカのフィリピン植民地化への野望が見えてきていた。内地で働いても身を立てられなかった多くの日本人の魂の為に、マニラ瑞穂館を建てようと夢見る秋岡は、志士たちのパトロンとなる。
スペイン軍が降伏し、アメリカ軍が勝利したと連絡が入ったが、一時的に成立した共和政府はアメリカの資本に負けて半年で崩壊し、マニラ瑞穂館は崩壊する。そして、アメリカ軍が彼らにとった行動は……。