「こうもり」指揮 アルフレート・エシュヴェ インタビュー

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ウィーンならではの大人のユーモアあふれる、オペレッタの最高傑作「こうもり」。

ヨハン・シュトラウス二世の甘美なワルツに酔い、演じられる歌芝居に大笑いし、

休憩時間にシャンパンを傾けたくなる、まさに劇場の楽しみの詰まったウィンナ・オペレッタである。

生粋のウィーン人で、ウィーン・フォルクスオーパーやウィーン国立歌劇場などで活躍する指揮者
アルフレート・エシュヴェに、
ウィーンの音楽の神髄について語ってもらった。

<下記インタビューはジ・アトレ8月号掲載>

  

「ウィーン気質」は
まさに私の血に流れています

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     リハーサルより

――生粋のウィーンっ子でいらっしゃるマエストロは、ウィーン音楽の気質をどのようにとらえていますか?ウィンナ・ワルツを一言で表すとすれば何でしょう。

エシュヴェ(以下Eはい、私は生粋のウィーンっ子です。ウィーン気質(注:オペレッタの題名「ウィーン気質」はドイツ語では〝ウィーンの血〞という意味)は、まさに私の血に流れています。一般的にウィーン音楽の気質というと19世紀からのヨハン・シュトラウス父子......ヨーゼフ・シュトラウスも忘れてはいけませんが、その、いわゆるシュトラウス・ファミリーの音楽にあるものを指すと思います。厳格なるクラシック音楽と軽音楽の間といいますか、そういうウィーンの音楽に〝ウィーン気質〞が流れていると思います。しかし、シュトラウス・ファミリーの音楽は、ヨハネス・ブラームスなどの大作曲家たちから大変に高く評価されていたのです。ウィンナ・ワルツを一言で表すと、〝人生の喜び〞ですね。

 

――そのウィーン音楽の気質をウィーン以外のオーケストラが表現するために、オーケストラに何か指示を出しますか? 

E その質問の答えになると思うのですが、4年前に新国立劇場で「魔笛」を指揮しましたけれど、日本のオーケストラには、ヨーロッパ、特にオーストリアやウィーンで勉強した音楽家がたくさんいます。日本だけでなく、韓国や中国やその他のアジアの人たちも、ヨーロッパの音楽を現地で勉強する人たちがたくさんいます。ですから、ヨーロッパですでに十分な勉強や体験をしているメンバーが必ずと言っていいほどアジアのオーケストラには入っていますので、言葉で詳しく説明する必要はないのですよ。先日ドイツのハンブルクで指揮した際、オーケストラの第二ヴァイオリン首席奏者は日本人の女性でしたが、イタリアの音楽を一緒に演奏して、とても素晴しかったです。新国立劇場の「魔笛」も、最初のリハーサルからすぐに私の指揮の意図を汲み取ってもらい、一緒に素晴らしい音楽をすることが出来ました。今度の「こうもり」でも、私は全く心配していません。一緒にウィーンの音楽をきっとうまく演奏できると確信しています。最初に、私の指揮で少し一緒に〝踊って〞もらえば、きっとうまくいきますよ(笑)。

 

――マエストロは長年ウィーン・フォルクスオーパーの指揮者を務め、ウィーン国立歌劇場でも指揮されていますが、ウィーン・フォルクスオーパーやウィーン国立歌劇場には各々の歌劇場ならではの「こうもり」のヴァージョンがあると聞いたことがあるのですが。

E いいえ、特別なヴァージョンはありませんよ。スコアは同じですから。まぁ、演出によって少し違ってくる場合はありますかね。第2幕の終わりにポルカ「雷鳴と稲妻」を挿入してバレエが入るなどはありますが、ウィーン・フォルクスオーパーもウィーン国立歌劇場も特別なヴァージョンはありませんのでご心配なく。

 

――新国立劇場のプロダクションは、「こうもり」のエキスパートであり、優れた歌手で、ウィーン・フォルクスオーパー日本公演にてフロッシュで出演もされた、ハインツ・ツェドニクによる演出です。彼の美点はどんなところでしょう。

E ツェドニクさんのことはもちろんよく存じ上げています。今ウィーン・フォルクスオーパーのレパートリーになっている「こうもり」も、再演にあたり彼が手直しの演出をしたものです。2012年のウィーン・フォルクスオーパー日本公演でも上演しました。新国立劇場のプロダクションは、それ以前にツェドニクさんが手がけた演出ですよね。それを私が東京で指揮できることはとても嬉しいです。ツェドニクさんはこの作品を知り抜いていますから、どこが肝要なツボになるか心得ていて、きっと日本の観客の皆様に大満足していただけると思います。 

 


「こうもり」は、何度振っても
いつも大きな喜びがあります

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東京交響楽団とのリハーサル風景

――出演者は、ウィーンでも活躍しているアドリアン・エレート(アイゼンシュタイン)、アレクサンドラ・ラインプレヒト(ロザリンデ)らですが、ご存じでしたらご紹介ください。

E ええ、皆よく知っていますよ。エレートは素晴らしい歌手というだけでなく演技も俳優並みですから、アイゼンシュタインにピッタリです。ラインプレヒトは、彼女の母親も歌手で、私は母娘の両方をよく知っています。ロザリンデは高い歌唱力が必要な役ですが、彼女なら難なくこなせると思います。期待してください! あと、フロッシュ役にウィーンの歌手であり役者のボリス・エダーが出演します。フロッシュ役は、年取った役者が演じることが多いと思いますが、彼はまだ40代ですので、若い世代のフロッシュを日本の皆様に楽しんでいただけること請け合いです。また、日本の歌手の方々とも共演できるということで、今から楽しみにしています。

 

――「こうもり」といえば台詞でその時々に観客に湧かせるジョークが出てきますが、これらは歌手たちと相談したりして準備するのですか?

E  台詞は指揮者の仕事の範疇ではありませんが、私はいつもとても興味を持って接しています。ウィーンでは歌手たちが、その時々で即興のジョークを言って客席を笑わせることはよくありますが、日本では字幕が出ると思いますので、いわゆる即興でのジョークはダメですよね。しかし日本の皆様に笑っていただけるようなエスプリの効いたよいジョークを、字幕を通じて楽しんでほしいと思います。

 

――「こうもり」を指揮する醍醐味、あるいは喜びとはどんなところにありますか?

E 私はこれまでの少なくとも30年間の指揮活動の中で、何度も「こうもり」を指揮してきました。この作品には全てがあると言えます。何度振っても、いつも大きな喜びがあります。オペレッタ中のオペレッタ、ウィーン音楽の最高傑作です!

 

――最後に、日本のオペラ・ファンにメッセージを。

E これまでに何度も日本を訪れ、ニューイヤーコンサートのツアーでは、北は仙台から南は九州まで各地を訪れ、ウィーンの音楽を日本の皆様にお届けしてきました。

今回、東京の新国立劇場で4年前の「魔笛」に続いて、ウィーン音楽の最高傑作といえる「こうもり」を指揮できることは、とても嬉しいです。新国立劇場で皆様との再会を今から楽しみにしています。

 

 


 

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