Highlights みどころ

高らかに鳴り響く自由への賛歌。 ベートーヴェン唯一のオペラを新演出で

正義、自由そして人類愛を崇高な音楽で描いたベートーヴェン唯一のオペラ『フィデリオ』を、開場20周年を記念し新制作で上演します。男装したレオノーレが、不当に監禁された夫を救い出す物語。1805年の初演から9年をかけ改訂が重ねられた楽聖渾身の作品であり、囚人の解放とレオノーレの勝利を讃えるフィナーレは、圧倒的な高揚感をもたらします。改訂の度に書き直された序曲や「囚人の合唱」は独立して演奏されることも多い名曲で、第1幕のカノンの四重唱やレオノーレの大アリア〈悪者よ!どこに急ぐのか〉、第2幕のフロレスタンの絶望のアリア〈神よ、ここは何と暗いことか〉なども大きな聴きどころです。

注目の演出は、ワーグナーのひ孫であり、バイロイト音楽祭総監督としてオペラの最前線をリードするカタリーナ・ワーグナー。「新しい視点を提供したい」と語るワーグナーの新鮮な解釈にどうぞご期待ください。指揮はオペラ芸術監督の飯守泰次郎。本公演で4年の任期の最後を飾ります。ステファン・グールド、リカルダ・メルベートをはじめとする内外のトップ歌手が総出演いたします。

Story ものがたり

第1幕

18世紀セビリア近くの監獄の中庭。門番ジャキーノは、看守ロッコの娘マルツェリーネが最近冷たいと気にしている。彼女は監獄で働き始めたフィデリオ(実は男装したレオノーレ)が気になっていた。フィデリオを気に入ったロッコと他の三人とで四重唱が歌われ、フィデリオはロッコに「地下牢で働かせてほしい」と訴える。監獄所長ドン・ピツァロが現れ、手紙の中に密書を見つける。彼はそれを読んで大臣が視察に来ると知り、政敵フロレスタンの幽閉が露見すると身の破滅だと歌い、フロレスタン殺害を決意する。夫フロレスタンを助けるべく獄中に入り込んだレオノーレは、ピツァロに視線を向け、大アリア〈悪者よ!どこに急ぐのか〉を歌う。囚人たちが中庭に出てきて、久しぶりの陽光に喜ぶ。ピツァロは、ロッコが許可なく囚人を外に出したことを咎め、急いで墓を掘るよう命じる。

第2幕

フロレスタンの繋がれている地下牢にロッコとレオノーレが来て、墓を掘り始める。レオノーレは囚人を一瞥し夫と確かめ、囚人にワインとパンを与える。彼は妻だと気付かぬまま感謝する。ピツァロが現れフロレスタンを殺そうとする瞬間、レオノーレが立ちふさがり「彼の妻から殺せ!」と叫ぶ。そのとき大臣到着を告げるラッパが聞こえ、ピツァロは戻らざるを得なくなる。大臣の前でフロレスタンは解放され、妻と抱きあう。ピツァロは逮捕され、歓喜のうち幕となる。

人物相関図