尾高忠明芸術監督による特別企画U
ドン・ジョヴァンニ<演奏会形式>

2011年5月『コジ・ファン・トゥッテ』公演に先駆けて上演した、『尾高忠明芸術監督による特別企画 コジ・ファン・トゥッテ 演奏会形式』は、多くのお客様にご来場頂き、大好評を以て終了いたしました。
新国立劇場オペラ公演における全ての役にキャスティングされているカヴァー歌手には、日本を代表するオペラ歌手たちが名を連ねています。稽古から公演までいかなるアクシデントにも対応できるよう本役歌手の控えとしてスタンバイしているのですが、本役歌手にトラブルがない限り、舞台に立つことはありません。日本のオペラハウスで、日本人歌手の活躍の場は必要不可欠と考える尾高芸術監督は、日本人歌手たちの実力を、観客の皆様にも知っていただくために、「コジ・ファン・トゥッテ」公演カヴァー歌手による演奏会形式を企画。舞台装置のない中劇場ステージに、6人の歌手と指揮者、弦楽アンサンブルが並び、モーツァルトの才能が申し分なく発揮された音楽を熱演しました。アンサンブル能力が高い日本人が創り出した絶妙なチームワークが光り、カーテンコールは惜しみない拍手に包まれました。
第2弾、喜劇でありながらデモーニッシュな魅力に溢れる「ドン・ジョヴァンニ」も、ソロやアンサンブルの聴かせどころ満載です。どうぞ、ご期待ください。

ものがたり

18舞台はヴェネツィア(オリジナルは16世紀頃のセビリア)。世界各地で2065人にも及ぶ女性を次々とものにし、従者のレポレッロがそれを「恋人のカタログ」にしてしまうほどの色男ドン・ジョヴァンニが、ある晩、騎士長の娘ドンナ・アンナのもとに忍び込む。ところが、ドンナ・アンナが騒いだため、父親の騎士長に運悪く見つかり、彼を刺し殺してしまう。その後も、三日間だけ結婚して捨てた女ドンナ・エルヴィーラに追い回されたり、結婚直前の村娘ツェルリーナを口説いたりと、性懲りも無く悪行を重ね、放蕩の限りを尽くすが、反省の色は全くない。ツェルリーナをものにしようと、自分の館の舞踏会に村人を招くが、ドン・ジョヴァンニへの怒りに燃えるドンナ・エルヴィーラ、父親の敵を取ろうとするドンナ・アンナ、その婚約者ドン・オッターヴィオが仮面をつけて現れ、ドン・ジョヴァンニの悪行を暴く。ほうほうの体で逃げ出したドン・ジョヴァンニとレポレッロが行きついた先は墓場。そこで、ドン・ジョヴァンニに殺された騎士長の石像が、彼の前に現われる。ドン・ジョヴァンニは不敵にも石像を晩餐に招く。やってきた石像に改悛を迫られるが、あくまでも拒んだため、突然床が割れて、地獄に落とされてしまう。