プッチ−ニがオペラ作曲家としての名声を確立した作品。美しく可憐なマノンとデ・グリュ−の熱く哀しい恋物語。
3作目にしてプッチ−ニをヴェルディに続くイタリア・オペラの新星たらしめた「マノン・レスコ−」(1893年初演)。原作は、アベ・プレヴォ−による当時の人気小説
「騎士デ・グリュ−とマノン・レスコ−の物語」で、既にマスネが同じ題材で「マノン」 (1884年)を発表し大成功を収めていました。台本はこの傑作との重複を意識的に避けようと、プッチ−ニ本人が満足のいくまで何人もの手を煩わせたため、完成まで3年余りを要しましたが、仕上がった作品は美しい音楽が全編に満ち溢れ、彼自身が「私の最大の音楽的傑作」と呼んだ程です。小説では“千度も気の変わるわがままなマノン”とされていますが、オペラではその享楽的性格が若干抑えられ、プッチ−ニ好みの可憐な女性として描かれています。マノンとデ・グリュ−の“青春の夢と挫折”を綴る音楽は、むせ返るような情熱に満ち、鮮やかな感情表現ときめ細かな人物表現は、後の名作を彷彿とさせます。「何とすばらしい美人」「やわらかなレ−スに包まれても」「独り寂しく見捨てられて」等のアリアは、誰しもを感動させずにはおかないでしょう。
あらすじ
18世紀、パリにほど近いアミアンの旅籠前の広場。青年騎士デ・グリュ−は、駅馬車から降り立ったマノンの美しさに一目惚れする。妖艶で奔放なマノンは、兄レスコ−に連れられて修道院に入ることになっていたが、デ・グリュ−の熱烈な誘いに心を動かされ二人でパリに駆け落ちする。
しかしマノンはパリでのデ・グリュ−との貧乏暮らしにあきたらず、かねて自分に関心を寄せていた財務官ジェロントの愛妾となってしまう。贅沢だが愛のない生活にやがて空しさを覚えたマノンの前にデ・グリュ−が現れ、愛を確かめ合っているところをジェロントに目撃される。プライドを傷つけられた怒りと嫉妬に燃えるジェロントは、マノンを姦通と窃盗の罪で警察に告発し国外追放処分に追い込む。
流刑地アメリカで再び一緒になったマノンとデ・グリュ−は追っ手を逃れて荒野をさまよう。やがて餓えと渇きに衰弱したマノンはデ・グリュ−に永遠の愛を誓いながら、彼の腕に抱かれつつ息絶える。
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