現代オペラ界の最先端を走る演出家ホモキの演出で、新国立劇場の新しい方向性を鮮やかに示した『フィガロの結婚』。「『フィガロ』見た?」が合い言葉になるほど活発な議論を呼んだプロダクションが、再びお目見えします。
『フィガロの結婚』は、モーツァルトの中でも最も広く愛されている作品。様々な人物が次々と登場し、めくるめく人間模様が活き活きと描かれます。軽快な序曲に「恋とはどんなものかしら」「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」などのアリア、フィナーレを飾る圧巻のアンサンブルと聴きどころもたっぷり。この不朽の名作に、ホモキ演出は秩序の崩壊というコンセプトを打ち出し、階級闘争を超えて最終的には裸の人間として人間性そのものの勝負に至る大きな流れを導入しました。初演では、細部まで裏付けられた演技による丁々発止のアンサンブルで、完成度の高い舞台を披露。オペラファンに限らず演劇ファンにも楽しめる舞台がやっと登場したと、広く話題を巻き起こしました。
今回の再演では、伯爵役に2004年5月のマクベスで圧倒的な声を聴かせたブレンデルが再登場。伯爵夫人はベルリンを拠点に欧州の第一線で活躍するエミリー・マギー。フィガロ役のムラーロ、スザンナの松原有奈をはじめ初登場の面々のほか、初演でもじっくり練り上げた演技を見せた充実のアンサンブルが脇を固めます。新国立劇場が誇る今最も旬の舞台『フィガロの結婚』を、どうぞお見逃しなく。
ものがたり
もとは理髪師で今はアルマヴィーヴァ伯爵の召使いフィガロは、伯爵夫人の侍女スザンナと、今日結婚式を挙げることになっている。伯爵は初夜権をひとたび放棄したものの、スザンナに気があるのでその復活を企む。一方、伯爵夫人は夫の冷めゆく愛を嘆いている。夫人、フィガロ、スザンナは結託して伯爵の鼻を明かそうと、恋多き思春期の小姓ケルビーノを女装させて伯爵をおびき出そうとするが……。
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