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2007/2008シーズン演劇 (芸術監督からのメッセージ)
 
2007−2008年。新国立劇場の開場10周年、演劇部門の芸術監督としてはじめてのシーズンをむかえるにあたって、いくつかの指針をまず頭にうかべました。それは、「大きな物語」の再生、「新劇」の再発見、日本の現代演劇とアジアとの出会い、同時代を共に生きる新しい作家たちとの出会い。この四つの指針です。

 「大きな物語」の再生とは、ひとことで言えば古典の読みなおしです。人類の、いわば原形質の呼びかけに耳を傾け、かなたの大きな物語が、我々の小さな日常とふれあい、火花を散らす地点に焦点を当てる試みといえるでしょうか。

 次に「新劇」の再発見。一方で欧米の近代戯曲を旺盛に摂取し、日本の現実と果敢にぶつかりあうことで築き上げてきた共通言語、「新劇」の力を、様々な新劇批判も踏まえた上でなお、もう一度我々のものとして、新しい観客席に届けたいと考えています。

 第三にアジアとの出会い。隣人との触れ合いを考えることは、とりもなおさず我々の歴史、現実、未来のあり方を直視することです。こののっぴきならない関係を演劇が取り上げることが、アジアの中の日本を考える智恵となることを期待しています。

 第四チャプターでは、「シリーズ・同時代」というタイトルのもとに、現代日本の新しい世代の劇作家と、すでに豊富な経験を持つ演出家との出会いを企図しました。次年度は欧米の「同時代」にも視野をひろげ、さらに新しい出会いを図るつもりです。

 劇場はふしぎな場所です。現実のこの世界を、ふだんとは一色ちがった色あいで見せてくれる魔法の箱。ここで私たちは、もしかしたら「不幸せ」は「幸せ」のはじまりじゃないか、「傷つくこと」は「癒される」ための前提条件だったのか、「涙」は「笑い」の生みの親かもしれないと気づかされます。ただし、この箱の厄介なところは、その逆も起こりうるということです。つまり「幸せ」が「不幸せ」に、「癒されること」が「また傷つくこと」に、「笑い」が「涙」に、たちまち変貌してしまう。人間世界の過去、現在、未来は、決して単純な一本道ではない、まがりまがってひと巡りして、また出発点にもどってくることもある。劇場で、われわれはそのことにも気づかないわけにはいかないのです。

 ここには、「暗転」、「明転」、「逆転」、さまざまなドラマがあふれています。しかし一夜の終わりの緞帳がおりて、次の日になれば、昨日死んだはずの登場人物たちが、また息を吹き返して、元気に舞台をつとめている。そんな陽気な、能天気な、おかしな場所に、最後の大逆転をもたらして、しかも今度は、本当に、この現実の世界を変えてしまうかもしれない法外なエネルギー、それがほかでもない、お客様の魔力です。

 劇場の、そんなあやしい魅力を満喫できるように、新しい挑戦を積み重ねたいと思っています。喝采もブーイングも、ありがたく頂戴します。今後とも、刺激的なおつきあい、どうかよろしくお願い申し上げます。
 

 
演劇芸術監督 鵜山 仁
演劇芸術監督
鵜山 仁
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