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「キーン或いは狂気と天才」稽古場通信

第2号  9月8日



 「キーン 或いは狂気と天才」は、前回もお伝えし たとおり、「三銃士」とか「モンテクリスト伯」(岩窟王)を書いた作家・アレキサンドル・ デュマの原作です。デュマは19世紀のはじめから中頃までに活躍した作家で、それを195 3年にサルトルが改めて戯曲化したのです。


 さて、この二人の巨匠が、興味を示した「キーン」という人物。当代きっての舞台俳優なの ですが、いったいどんな人だったのか。とりあえず、この人のプロフィールに迫ってみましょ うか。

 主人公のキーンは当時の大英帝国・イギリスの大俳優です。キーンが活躍したころのイギリ スは、フランスのナポレオンを打ち破って、その絶頂が目前という輝かしい時代。きっと国政 を預かる貴族たちも、軍人たちも、肩で風切って、意気揚々としてたはずです。またそんな大 国イギリスには、ヨーロッパ各国から敏腕の大使が集まっていました。そんな人々を向こうに 回し、そんな人々を振り回しまくったのが、キーンです。
 しかし、それはどうやら舞台の上の話しではなく、そのほとんどが、恋の物語。というと格 好がいいですが、下世話にいうと痴情の事件で、まあ率直に言って、色恋沙汰のトラブルを巻 き起こし続けた人物だったようです。同じころの日本でも歌舞伎役者と大奥の腰元との間で、 スキャンダルが起きてますから、人間のする事は、東西も昔も変わりないようです。
 「ところで、そんなキーンにも真実の恋の物語があった…」というのがきっとこの解説を始 めるのにふさわしい言葉でしょうが、これは別の機会に。


 芝居というと、必ずいろんなデフォルメがされているものと、考えていられる方も多いと思 います。「そうでないと、面白くないもんね」とは見る側も、つくる側も一緒の弁かもしれま せん。実在の人間の行動が、「小説よりも奇なり」というのは、やはり珍しい、のでしょう。

 しかし、この「キーン」の物語は、かなり史実(と言って良いのか?)に忠実に、書かれて いるはずです。というのも、原作者のデュマはお国こそ違いますが、同時代に生きた人です。 デュマは、お隣フランスの人。しかも、キーンが死んで、わずか3年後に舞台にしてしまいま した。その上演中だって、「キーンはあんな奴だった」と言いまくる人が、ごまんといたはず です。だから、きっと、「ああ、あいつはあんな奴だった」と舞台を観ていた観客が多かった ことでしょう。そして観客は、笑って笑いまくったのです。そう記録に残るほど。


 そして、およそ100年後。サルトルのリメイク。100年後のパリの観客も笑いまくりま した。主演の俳優の名演技もさることながら、破天荒なキーンの人生に。


「キーン」という作品が持つ笑いとは裏腹に、実際のキーンの生活は、なかなか壮絶なもの。 やはり、短命な人生でした。わずか46才で死去。そのキーンの華麗なたった一つの本当の 恋の物語。
 やはり、そう書かずにはいられません。

「キーン」稽古場通信員
桂屋桂丸

to be continued

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