大村博美(6月24日〜7月9日公演 蝶々夫人役ソプラノ)
(「オペラトーク」より)
大村博美:蝶々さんという役柄は、日本人であるということをはずして考えたくありません。海外で蝶々さんを歌う機会があると、日本が舞台というところにそれほど重きを置かずに、現代や、他の様々な国や時代へと設定を変える傾向が強いことを感じますが、私としては、この時代の日本と、日本の女性というところにこだわりたいと思います。プッチーニもわざわざそのように設定して作曲したというところを尊重して、プッチーニの描きたかった日本の女性像「誇りを持ち、弱くはかないように見えて、実は芯の強い女性」を表現したいと思います。
このオペラでは、最後まで妥協することができず、死をも受け入れざるを得なかったという、外国にはない日本の潔さの文化を描いていると思います。楽譜をじっくり眺めると、イタリア人の男性であるプッチーニが、よくもここまで日本の女性の心理や性格描写を描けたと、その洞察力に感嘆してしまいます。プッチーニの書いた音楽にのせて歌詞を読み合わせると、自然とその女性の姿が浮かび上がってくるのです。
撮影:三枝近志

