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2013年3月8日

演劇「長い墓標の列」 村田雄浩 朝日新聞インタビュー記事のご紹介
-思想弾圧と戦った「武士」-

先日初日を迎えた演劇公演「長い墓標の列」。この舞台で主役の山名教授を演じる村田雄浩さんのインタビュー記事が、3月7日(木)の朝日新聞夕刊に掲載されましたのでご紹介します。


 
写真提供:朝日新聞社   
 戦前の思想弾圧が題材の1957年初演「長い墓標の列」が東京・初台の新国立劇場小劇場で上演される。主演の村田雄浩は「絶対ひよらず生きていこうとするのが一つのテーマ」と話す。
 昭和10年代、軍国主義に抑圧される大学で、経済学部教授の山名(村田)は自治を求めて教授会で戦う。
 山名を「高速回転の脳を持った武士」と例える。「日本のあるべき姿をしっかり持ち、思想の開国をしようとした人だと思う」。モデルの東京帝大教授、河合栄治郎は、ファシズムで物言えぬ空気だった当時の学内で、ゼミの学生に自由な発言をさせ、進歩的で理想的な関係だったという。
 周囲には転向や自主退職を迫られ、共に戦った教え子たちには裏切られていく。「戦争さえ終わればじっくりやれるから乗り切ろう、と山名は言う。でも、弟子は生きていくために黒も白と言わなければいけないときがある」
 村田は小学5年の時、母から2冊の大学ノートを渡された。同じ年頃で集団疎開をした母が、体験をつづっていた。疎開先の人々は自分たちの食料を優先し、やはりひもじかった。甘いものを求め、皮膚病の薬を奪い合ってなめた……。母には「戦争で一番大変なのは女子供だった」と言われた。「弱いものを巻き込んだ戦争を、どう思う?」と投げかけたんだ、と悟った。
 舞台の背景は、中国と武力衝突した日中戦争だ。「その頃の知識階級の人間がどう考え、なぜ破れたのか興味を持ってもらいたい。日本は、こういう経験をしているのだから」。この役者も、理想を見捨てはしない。

2013年3月7日 朝日新聞(井上秀樹)
※朝日新聞社の許諾を得て掲載しています

 
手前左より村田雄浩、那須佐代子
(撮影:谷古宇正彦)
『長い墓標の列』公演は3月24日(日)まで。

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