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2012年11月26日

オペラ「セビリアの理髪師」 待望の登場
ダリボール・イェニス(フィガロ役) インタビュー

「セビリアの理髪師」が新国立劇場への初登場となるダリボール・イェニス。実は、彼とは2011年3月の「マノン・レスコー」(レスコー役)でオーケストラ付きの最終通し稽古まで一緒に稽古をしました。これまでの新国立劇場のオペラ公演の中で指折りの素晴らしい公演になると関係者誰もが確信したその翌日、3月11日の東日本大震災が発生し開場以来初の公演中止という苦渋の決断がなされました。

 
■幻の「マノン・レスコー」から1年8ヶ月

-----お帰りなさい!ダリボールさんは、大震災後の余震の続く中、公演ができる可能性がある限り日本に残ると言って私たち劇場スタッフを励ましてくれました。当時のお気持ちをお聞かせいただけますか?

3月11日を日本で体験した者として、自分たちのプロダクションのことより、被災された方々にとって信じがたい日々の始まりだと感じたことを思い出します。大震災に遭われた方々、そして今も福島をはじめ被災地とその周辺で辛い思いをされている方々の苦しみを考えれば、公演の中止はいたしかたないことだったと思います。そのような状況下、後ろ髪を引かれる思いで日本を去った日のことは忘れることができません。

歌手、アーティストとしての仕事の面で言うと、あの「マノン・レスコー」プロダクションは本当にすばらしい演出家、指揮者、キャスト、そしてスタッフに恵まれました。オペラ歌手になって約20年経ちますが、あれほどの高いクオリティのメンバーが集まって作品を作り上げられることは極めて稀だと思います。その公演が叶わなかったことはとても残念でした。

----それから1年8ヶ月を経て、「セビリアの理髪師」でダリボールさんが新国立劇場に帰ってきました。

大震災の数日後、とても悲しい気持ちで日本を離れましたが、その時に「絶対また別の機会にこの劇場に戻ってくる」と心に誓っていました。”人生は何があっても続いていくものだ”ということをアーティストとして自分の身を持って示せれば、と思ったからです。なので、できるだけ早い機会に戻ってきたいと願っていました。

 
■ヴェルディの渋いバリトン役から当意即妙のフィガロまで

-----幅広いレパートリーをお持ちで、オネーギンなどのシリアスな役もすばらしいですね。ご自分では特にどのオペラ、どの役がお好きですか?今後歌いたい役はどのような役ですか?

ここ数年はヴェルディ作品の依頼が多いですね。昨年は「オテロ」のイアーゴのロール・デビューをしました。それから昨年は「ファルスタッフ」のフォードもロンドンで歌いました。私たちオペラ歌手は、歌を歌うことはもちろん、その役のキャラクターを追求し演じることも怠ってはなりません。このふたつの役については、演じる要素も深く求められます。特にイアーゴでの経験は、多様な演技力と強い個性を必要とする役にもっと取り組みたいという気持ちを強くさせてくれました。



-----さて、今回は軽快なフィガロで日本のファンを楽しませてくださるわけですが、世界中のメジャー歌劇場で歌っているあなたの「セビリアの理髪師」フィガロ像とはどんなものですか?

フィガロは私の偉大なる友です。これまでにも色々なタイプのプロダクションに出演しています。新しい解釈のものも多いし、フィガロが理髪師である伝統的な演出のものももちろんたくさん演じています。どのような演出であっても、原則的にフィガロは人生を謳歌している愛すべき人間です。申し上げたように最近ヴェルディを歌う機会が多いので、そこから急にロッシーニに戻るのは声楽的にはとても難しいことなのですが、一方で旧友に会うような大きな喜びがあります。


-----今回の新国立劇場のプロダクションはいかがでしょう?誰もが楽しみにしているフィガロのアリア“私は町のなんでも屋”での登場方法も度肝を抜かれますが・・・(笑)

このプロダクションも伝統的ではないけれど、ポップな演出でとても楽しんでいます。この演出のフィガロは、装置も衣裳も含めて私自身が役に入りこみやすい面を持っていますし、お客様の心にもすーっと入っていける隣のお兄ちゃん的なフィガロだと思います。どうかお楽しみに。


-----話は変わりまして・・・髪の毛がサラサラで素敵ですが、いつもご自身の髪で舞台に登場されていると聞きました。どのようなこだわりがありますか?

(少し照れて)ありがとうございます。こればかりはこのような髪質に産んでくれた両親に感謝ですね(笑)。かつらを使わないで舞台に出ていることにそんなに深いこだわりや理由があるわけではないんです。自分の髪に酔ってる、とかそんなんじゃ全然なくて(笑)・・・かつらを載せて舞台に出るよりずっと楽だからですよ。


-----新国立劇場のファンにメッセージを。

やっとお会いできますね。公演の日をとても楽しみにしています。


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