2012年11月14日
演劇「るつぼ」メディア掲載情報(朝日新聞公演評のご紹介)
小劇場にて大好評上演中の演劇公演「るつぼ」。
11月8日(木)の朝日新聞夕刊に掲載された公演評をご紹介します。
1953年に発表され、わが国では62年に民芸が初演したアーサー・ミラー作の「るつぼ」を、水谷八也の新訳を得て宮田慶子が演出している。少しも古びていないばかりか、射程の長い普遍性をもつ戯曲であるのを再認識させられる。
17世紀の終わりごろ、イギリスの植民地だった北米マサチューセッツ州のセイラムという村で実際に起こった魔女狩りがモチーフになっていて、戯曲の発表時は作者も巻き込まれた反共主義者による赤狩りがアメリカ全土を席巻していた。
これへの抗議の意を込めて書かれたのが本作。村の有力者のプロクター(池内博之)と不倫の関係にあったアビゲイル(鈴木杏)が、妻のエリザベス(栗田桃子)を魔女だと告発してこの世から抹殺し、彼女に代わって妻の座に就こうとするのが主筋だ。
異種排除の怖さと、昨今のはやり言葉で言えば風評の広がる様をリアルに描いて迫真的で、舞台を三方から囲む客席の配置もこの効果を高めている。観客の神経をせりふに集中させるべく、演出は余計なものを一切排し、このコンセプトは美術(長田佳代子)や照明(中川隆一)、音響(長野朋美)などをも貫徹している。暗転の時に歌われる讃美歌の快さは、歌唱指導(伊藤和美)のたまものだろう。
副総督の磯部勉が実力を発揮するほか、一度は魔女狩りから脱しようとするメアリー役の深谷美歩が好演。栗田の抑えた演技も印象的だ。池内は人間の尊厳を自問する大詰めがいい。他に檀臣幸、木村靖司、関時男、浅野雅博、田中利花、松熊つる松、佐々木愛らの出演。高水準の緊迫した舞台だが、15分の休憩を含めて3時間45分の上演時間は、一工夫なかったか。
(2012年11月8日 朝日新聞(大笹吉雄・演劇評論家))
※朝日新聞社の許諾を得て掲載しています
「るつぼ」公演は今週日曜日、18日までです。どうぞお見逃しなく。
◎「るつぼ」公演情報は
こちら(公演日程、チケット料金、座席表、出演者動画メッセージなど)