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2012年2月27日

演劇「まほろば」、井上ひさし氏が岸田國士戯曲賞選評で絶賛!

  2008年公演より (撮影:谷古宇正彦)
おもしろい場面  井上ひさし

 劇作家の大切な仕事の一つに、〈おもしろい場面を背負って登場する人物を用意すること〉というのがあります。おもしろい場面という言い方に抵抗があるならば、感動的な場面でも痛切な場面でもなんでもいい、とにかく劇作家は、その芝居の質を決める取って置きの場面を登場人物のだれかに内蔵させておいて、それを最良の間合いで表に出して客席を圧倒する。
 蓬莱竜太氏の『まほろば』の登場人物はすべて女性ですが、作者は、登場するすべての女性に「おもしろくて、感動的で、痛切な場面」を背負わせていました。それらの場面の基になっているのは、妊娠する力です。作者は、過去に妊娠したことがある、いま妊娠している、そして近い将来に妊娠するであろう女性たちの心の動きとその言動を巧みに組み合わせてがっしりした深層構造をつくりました。そして表層は、華麗で滑稽で露骨な対話で飾り立て、自由で軽快な滑走感を生み出しました。決してよそ見をせずに、ただひたすら「妊娠したのか、しないのか」に焦点を絞っているのも清潔でいさぎよく、豪快にして巧緻、軽妙にして深い思想を秘めた傑作です。<以下略>

(第53回岸田國士戯曲賞(2009年)選評より)
※こまつ座および白水社の許諾を得て掲載しています
 


2008年の初演時に大変な好評を博し、第53回岸田國士戯曲賞も受賞することになった「まほろば」が、この4月に再演を果たすことになりました。多くの観客の笑いと涙を誘った6人の女たちが、さらにパワーアップして帰ってきます! 現代演劇を担う実力派女優陣が勢ぞろいして火花を散らす、演劇の醍醐味いっぱいの舞台をお楽しみください。

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