2012年2月7日
オペラ『沈黙』(新制作2月15日初日)の稽古が佳境に入りました!
全篇見どころの中から 選りすぐりのシーンをご紹介。
オペラ『沈黙』の稽古が佳境に入りました。両キャストとも稽古場での通し稽古を終え、今週から舞台稽古が始まりました。2月1日には尾高忠明オペラ芸術監督も緊張感溢れる通し稽古に立ち会い、「この作品を選んで良かった」としみじみ語りました。息苦しいまでに集中した稽古場には、遠藤周作さん、松村禎三さんの魂が降りてきているかのようです。
数ある日本オペラの中でも、再演を熱望され続け、1993年の日生劇場での初演(95年に一部改定再演)以来、新国立劇場(2000年)、大阪音楽大学カレッジ・オペラハウス(03年、05年)と公演機会を重ね、再び新国立劇場での新制作公演が実現しました。今回は中劇場が舞台です。歌い手の息づかい、細やかな表情のひとつひとつが手に取るように伝わる緊密な空間である中劇場での公演に期待が高まります。日本人でなくては歌えない日本オペラに対する出演者たちの思い入れもひとしおで、日々熱のこもった稽古が繰り広げられています。
■松村の音楽と、遠藤文学の融合。松村が自ら書いた台本の言葉のひとつひとつが音符を伴い、歌い手を通じて我々の心に訴えかけます。音楽的にも難しいこのオペラを力強く牽引するのは指揮の下野竜也。ファン待望の新国立劇場初登場です。そして演出は新国立劇場演劇芸術監督の宮田慶子。歌手たちとの綿密なコミュニケーションを大切にしながら、初めてのオペラ演出とは思えないほど、この作品を読み解いています。
公演情報ページは下記をご参照下さい。
新国立劇場2011/2012シーズンオペラ「沈黙」公演情報☛
 指揮:下野竜也 演出:宮田慶子 |
■見どころ 聴きどころ2幕全16場。全ての場面が“見せ場”と言っても過言でないこのオペラ。その中から、選りすぐりのシーンをご紹介します。
(文中敬称略)
<第5場 山上のアリア>このオペラの主人公ロドリゴのアリア。司祭を失い、息をひそめるように生活している信徒たちの支えになりたい一心で同僚たちの反対を押し切って日本に上陸、トモギ村の信徒たちとめぐり合い、希望に満ちて神への愛を歌い上げます。
 この役をレパートリーとし、絶対的なロドリゴのイメージを確立している小餅谷哲男。関西を中心に活躍中。 〜第14場より〜 |  満を持して難役ロドリゴに挑む小原啓楼。来る4月には『オテロ』カッシオに出演予定。〜第14場より〜 |
<第8場 水磔(すいたく)>遠藤周作の原作には無く、台本・作曲を手掛けた松村禎三が創作した役がオハルです。高橋薫子、石橋栄実が、このオペラの象徴的な犠牲者、オハルを演じます。オハルが歌う“水磔”での狂乱の歌唱は、1幕の最大の見どころ、聴かせどころ。踏み絵を拒否し、殉教を選んで海の中に磔(はりつけ)にされて死んでゆくオハルの許婚モキチ。「なぜマリヤ様は助けてくれないの!」「モキチ、死なないで!」というオハルの叫び。それを目の前にしながら、祈ることしかできない自分に打ちひしがれるロドリゴ。高橋も石橋も号泣しながら、苦しみと葛藤を見事に歌い上げます。オハルにリアクションする村人役のソリストたちも合唱団も自然に涙が溢れています。この壮絶な歌唱を中心に“稽古場全員の気持ちがひとつになる”めったに見ることのできない情景が生まれています。公演では、中劇場の舞台が客席とひとつになって、誰もがオハルに感情移入することでしょう。
 日本を代表する人気ソプラノの高橋薫子。 初めての日本オペラ出演に期待。 〜第10場より〜 |  手中にあるオハル役で高い評価を得ている石橋栄実。 関西を中心に活躍中。〜第10場より〜 |
<第12場 牢、第14場 牢(独房)>かつての恩師、フェレイラとの再会の場面。“転びもの”キチジローの密告により奉行に囚われたロドリゴ。そしてロドリゴを転ばせようと、共に囚われたトモギ村の人が次々に拷問で殺されていきます。1幕冒頭からロドリゴがその消息を捜し求め、何度も名前を口にしていたその人が、ついにロドリゴの前に姿を現します。かつての面影を失い、日本人の名前を与えられ着物をきたフェレイラが第12場で初めて言葉を発します・・・「気を鎮めるのだ、ロドリゴ」。反発するロドリゴ、しかし第14場で、処刑を翌日に控えた夜を過ごすロドリゴが独房のなかで経験したこととは・・・・?そして、ドラマのクライマックスへの大切な導入シーン。テノールとバリトンの鬼気迫る対峙、歌唱の火花が深遠な終幕への予兆となります。
 左から:加茂下(チョウキチ) 大久保(老人) 小林(少年) 増田(おまつ) 石橋(オハル) 〜第10場より〜 |  左から:与那城(フェレイラ) 小原(ロドリゴ) 町(通辞) 〜第12場より〜 |
■豪華歌手陣と新国立劇場合唱団、オーケストラは東京交響楽団ロドリゴと同じ苦しみを味わい、苦悶の末“転んだ”フェレイラ。今回、この役を演じるのは、2000年公演で高い評価を得た
久保和範と初挑戦の
与那城敬です。そして、登場人物の中で、演出の宮田が重要な役と位置づけた転びもののキチジローを演じる
星野淳と
桝貴志。与那城、桝に加え、おまつ役の増田弥生、通辞役の町英和も研修所出身者です。彼らの活躍も楽しみです。
忘れてはならないのは、これまでに紹介した主人公たちをとりまく豪華なキャスト陣、そして新国立劇場が誇る新国立劇場合唱団です。全編に渡って作品に奥行きを出しているひとりひとりの熱演、叫びにもご注目ください。
東京交響楽団は2000年の新国立劇場公演以来12年ぶりに「沈黙」を演奏します。指揮の下野のもと順調に稽古を重ね、歌手との合わせ稽古が終了しました。
 星野(キチジロー) 〜第7場より〜 |  桝(キチジロー) 〜第14場より〜 |
稽古場に溢れかえる楽器、ソリスト、合唱団…この熱気と臨場感をそのまま中劇場に運び、お客様にご覧いただく日までさらに磨きをかけてまいります。
2月15日(水)初日の『沈黙』にどうぞご期待ください。
1月21日に行われた『沈黙』オペラ・トークの模様はUSTREAM(動画)でご覧いただけます。
☛
http://www.ustream.tv/channel/nntt-silence
 〜第8場より〜 |