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2012年2月3日

演劇「まほろば」、初演時の劇評をご紹介します

  2008年公演より (撮影:谷古宇正彦)
女たちのドラマ喜劇的に

巧みだ。蓬莱竜太・作、栗山民也・演出「まほろば」は女4世代、6人の家庭劇の形をとる。多層な時間設定と、生きた人間像、せりふが効く。
神話・民俗の時間が大枠にある。舞台上方を飾る八雲立つ山々。題名が意味する美しき国だ。夏祭りの祭囃子が、忍び込む。この民俗の時間を切り裂く、原爆の閃光。現代史の悲劇を含んだ大いなる時のまなざしの下、産む性としての女たちのドラマが、緊密なアンサンブルで喜劇的に繰り広げられる。
 
  2008年公演より (撮影:谷古宇正彦)
長崎の田舎町にある旧家の居間で起きた半日の物語。母(三田和代)は宴会の準備に心せく。前夜には長女(秋山菜津子)が、今また次女(魏涼子)の娘(前田亜季)が、東京から突然帰郷する。2人は仕事に疲れ、男との関係でボロボロだ。
秋山が大都会で働く独身女性の健気さと、一抹の荒廃感をコミカルに出す。<略> 笑わせるのは三田のせりふ術。激して声を裏返すかと思えば、鋭くたたみ掛ける。旧家の血筋と体面を守ることに汲々とする。長女に早く結婚しろ、相手は誰でもいいから子供を作れと求める身勝手で憎めない母像がおかしい。<略> 
客席も包み込む轟音と劫火、熱射から身を守る、産土の現代女性たち。すぐれた演出だ。美術は松井るみ。

(2008年7月18日 朝日新聞(山本健一・演劇評論家))
※筆者の山本健一様および朝日新聞社の許諾を得て掲載しています
 


2008年の初演時に大変な好評を博し、第53回岸田國士戯曲賞も受賞することになった「まほろば」が、この4月に再演を果たすことになりました。多くの観客の笑いと涙を誘った6人の女たちが、さらにパワーアップして帰ってきます! 現代演劇を担う実力派女優陣が勢ぞろいして火花を散らす、演劇の醍醐味いっぱいの舞台をお楽しみください。

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