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2011年11月15日

マンスリー・プロジェクト トークセッション「美×劇」が開催されました

2011/2012シーズンの【マンスリー・プロジェクト】第3弾はトークセッション。「美×劇」をテーマに、11月12日(土)5:30に中劇場で開催されました。

上演中の『天守物語』の舞台上に、この作品の演出を手がけた白井晃氏、同じく『天守物語』を15年前に初めて演出し、今年の6月末から7月にかけて再演した、静岡県舞台芸術センターの芸術総監督の宮城聰氏を迎え、演劇芸術監督の宮田慶子も加わり、3人のトークセッション。

出自もまた演出スタイルも異なった、ほぼ同世代の3人の演出家。特に同じ『天守物語』を手がけた白井・宮城両氏だが、取り組み方も舞台も異なり、その違いを本人の言葉より聞けて興味深いトークとなりました。それまで西欧の古典を主に演出してきた宮城氏が初めて取り組んだ日本の近代古典戯曲が『天守物語』でした。その後、劇場だけではなく、公演場所にこだわり、また海外でも積極的に上演を続けてきた宮城氏は、「海外では最初はアジア、それも芸術の盛んな都市ではなく、演劇とはあまり縁のない土地で上演しましたが、反応がおもしろかったですね。物語も言葉もわからないのに、反応してほしいなというところで反応してくれましたし。文化的他者との出会いを『天守物語』で発見しました」と語りました。宮城氏の演出の手法は、「ムーバー」(演じ手)と「スピーカー」(語り手)が一体になって一つの役を表現するという、わかりやすくいえば人形浄瑠璃のような舞台。『天守物語』の富姫のスピーカーは野太い声の男優、ムーバーは女優でした。その手法にも言及した一方、「獅子頭が舞台中央にない『天守』を初めて観ました」と白井氏に質問。「初めから下手奥と決めてました。対角線上で正面になれば」と白井氏。正方形の平舞台下手奥に鎮座する獅子頭の位置ひとつにも、いかにも白井氏のこだわりが感じられました。
初めて「和物」に挑んだ白井氏は、「とてもいい経験をしましたし、すべてが新鮮で、和の美意識にもおおいに興味をそそられ、演出しました」は語りました。その美意識について、シリーズテーマを決めた宮田芸術監督は、日本と西洋の美意識の違いなどに言及、「美×劇」を超えた幅広いトークセッションとなりました。

お客様からは、「白井さんと宮城さん、それぞれの作品へのアプローチ角度の違いたいへん興味深く、楽しいトークでした」「本日、天守物語を観て記憶が鮮明なうちに演出の意図を聴くことができましたし、泉鏡花の特質も知ることができました」「白井さんの新感覚の和物、すばらしかったので、鏡花さんのことやせりふのことなど、思いをお伺いできてうれしかったです」などの感想をいただきました。
                           

佐藤優(聞き手)   白井 晃   宮城 聰   宮田慶子