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2011年9月30日

2011/2012シーズン『イル・トロヴァトーレ』最終舞台稽古 無事終了!
尾高忠明芸術監督からのメッセージ

9月29日(木)、2011/2012シーズンのオープニングを飾るオペラ『イル・トロヴァトーレ』のゲネプロ(最終舞台稽古)が行われました。

イタリア・オペラの醍醐味である“声の彩り”を十分堪能できる名作で、キャスト変更があったものの、タマ―ル・イヴェーリ(レオノーラ)、アンドレア・ウルブリッヒ(アズチェーナ)、ヴァルテル・フラッカーロ(マンリーコ)、ヴィットリオ・ヴォテッリ(ルーナ伯爵)が刻一刻と近づく死に見守られながら、逃れられない運命の歯車の中での愛憎劇を演じます。メトロポリタン歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、フィレンツェ歌劇場、スウェーデン王立歌劇場などに次々とデビューし、イタリア・オペラを中心に活躍しているピエトロ・リッツォの指揮、複雑なストーリを解きほぐして作品をより深く楽しめる演出を目指したウルリッヒ・ペータースの舞台に、どうぞご期待ください。

10月2日(日)初日です!
新国立劇場 ボックスオフィス☎03−5352−9999

公演情報ページは下記をご参照下さい:
2011/2012シーズンオペラ「イル・トロヴァトーレ」
2011/2012シーズンオペラ「イル・トロヴァトーレ」特設ページ
 

最終舞台稽古より   撮影:三枝近志

〜〜〜〜〜〜尾高忠明芸術監督からのメッセージ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2011/2012シーズンが『トロヴァトーレ』で開幕する。演出のウルリッヒ・ペータースさんとは、昨年夏、バイロイト音楽祭とザルツブルグ音楽祭視察の間に、ミュンヘンでお会いした。その時、伺った新演出プランをとても素晴らしいと思ったが、今、新国立劇場の舞台で、より練られた内容となっている。劇場スタッフや関係者から「素晴らしい出来だ」との声が聞こえてきて、本当に嬉しい。体調不良のために発生したキャスト変更で急遽来日して下さったレオノーラ役のタマール・イヴェーリさんはじめ、マエストロ、ピエトロ・リッツォさんたちには、原発事故の影響を恐れる声も聞かれる中、来日して下さった事に深く感謝する。日本人の歌手の方々も、数ある名作の中でも最高峰に属するこのオペラ作品を、最高の演技と歌唱で魅せてくれている。音楽は、心の栄養であると信じている。だから、この公演のオープニングが大成功し、日本復興に少しでもお役に立てればと願わずにはいられない。

私自身20年ぶりのオペラ指揮となるはずの『サロメ』を、心より楽しみにしていた。しかし、残念ながらそれを実現することができなかった。夏頃から始まった体調不良が、9月後半にはめまいなどを伴うようになったため、詳しく検査をしたところ頸椎に異常が見つかった。今、懸命に療養している。回復の兆しを少しだけ感じ始めてはいるが、オーケストラピットの中に入って長時間、舞台の上を見上げるオペラの指揮は、頸椎への負担が多く、諦めざるをえない状況だと主治医からも伝えられた。

自分自身が、この様なキャンセルをしなくてはならないことになるとは、夢にも思っていなかった。楽しみにしていてくださるお客様や、公演関係者への多大な負担を思うと、悔しく気が滅入るのだが、今、自分に一番求められているのは早く元気になる事だと思っている。
急なお願いにもかかわらず、マエストロ、ラルフ・ヴァイケルトさんが指揮を引き受けて下さった。私は、指揮法の名教授として名高いウィーンのスワロフスキー門下だが、ヴァイケルトさんは 7年先輩の同門だ。この大ベテランが代わってくださるのならば、安心してタクトを託すことができる。急なキャスト変更で来て下さったスコット・マックアリスターさんにも大変感謝している。全ての出演者、スタッフの力が結集した、素晴らしい『サロメ』が、お客様にご満足いただけるものになると確信しています。
どうぞご期待ください。
                                                新国立劇場オペラ芸術監督
                                                尾高忠明