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2011年9月30日

バレエ&ダンスの新シーズンが、いよいよ開幕です!
【オープニング特別対談】首藤康之×小野絢子(パート2)

パート1から続く>

−首藤さんは、小野さんたちの世代とご自身の世代との違いをどのように感じますか?

首藤: 今は環境がとてもいいと思います。以前はぜんぜん違いましたね、僕たちの頃は、自分からアプローチしなければ、待っていても何も来ないという時代でした。僕もそんなに積極的なタイプではないですけども、やりたいこととか、本当に踊りたい作品や振付家に関しては、積極的でしたね。

−新国立劇場バレエ団の印象は?

首藤: 東京バレエ団とは雰囲気が違いますね。今も東京バレエ団に作品指導に行ってから、新国立劇場にリハーサルに来る時もあるんですけれども、カンパニー色というのは、本当にそれぞれ違いますね。ダンサーのタイプはカンパニーのトップに似てくるのと、コール・ド・バレエの質もそれぞれ違いますし。どちらの方がいいとかいうことではなくて、違いがあることは良いことだと思います。本当にみんなトップに似てくるので、そういう意味でもトップに立つ人は、責任重大と思います。佇まいからはじまり全てのことに対してね。

―世代的に近い方は、どなたですか?

首藤: 多いんですよね、僕の世代は。熊川哲也さんもそうだし、小島直也さんも、みんな同世代ですね。

−違うカンパニーに所属する同世代の動向は、どのように見ていらしたのですか?

首藤: カンパニーによって作品が違うので、「羨ましいな」と思うこともありましたよね。例えばマクミランなんかは、なかなか踊れないですからね。マクミランの「ロメオとジュリエット」とか「マノン」を日本のカンパニーが上演するようになるというのは、素敵な進歩だと思います。昨年東京バレエ団も、クランコの「オネーギン」をやりましたが、本当すごくいいことだと思います。
とても重要なことですが、絶対に完全にその振付家の意図を正しく守っていくということは、とても大事な作業なので、「すごくいいこと」であると同時に大きな責任がついてくると思います。その責任をしっかりと感じながら、やっていかないといけないですよね。「ロメオとジュリエット」は、どなたを参考にしたとかあるんですか?
 
小野: 最初に小林先生のところでバルコニーシーンだけ踊った時に、ずっとマクミランについて仕事をされていた方から教えていただいたことがあって、彼女から「アレッサンドラ・フェリの最初のビデオ以外見ないように」って言われました。
首藤: ウェイン・イーグリングと踊ってるものだ。あれは最高だよね。
小野: あれがいちばん「オリジナルに忠実だし」と。
首藤: 音の取り方からすべてね。
小野: その時は、ビデオを参考にしましたね。
首藤: じゃあもう自分の中に、何回も観ているからはいっているんだ。僕もあのビデオが一番好きで、彼女が本当に等身大の若い頃に踊ったものですよね。
小野: それ以外の他のビデオをみたら、怒られそうでした(笑)
首藤: マクミランがそう伝えたからでしょうね、きっと。だんだん作品が振付家の手から離れて、独り歩きする状態っていうのが多くなっている気がします。それは、やはり問題で、振付家自身から直接習った人に習ってそのまま伝承していくということが、すごく大事なことです。たいへんな作業ですけれども、それを丁寧にしていかないと作品というのは埋もれてしまいますよね。
ちょっとした音の取り方でも、例えばダンサーによって薬を飲むタイミングとか、本当にみんな違うじゃないですか。この前に小野さんがやってらしたのが本当に正しいんですよね。僕なんか、あそこを外されるともう…。
ちょっとしたことなんですよ、踊りだけじゃない。アプローチの仕方、音のとらえ方といった、細かいところです。動きというのは見ればわかりますから。ちょっとした彼女たちのその当時の経験を聞くことによって、その時を想像して自分に置き変えて動きにつなげていく。振りを覚えて音を覚えるだけだったら、ビデオでもできますけれど、そういった経験を聞くということはとても大切なことですよね。

−東京バレエ団は、作品の数が多かったですよね。小野さんは、そういった環境はどう思われます?

小野: 羨ましいと思います。直接振付家の方がいらっしゃって、みっちり教えられて、といった記事や本を通しての印象があります。
首藤: そうですね。だいたい初演では振付家が来て、僕が在籍していた時は主に、ベジャールさんとキリアンさんとノイマイヤーさんだったんですけれども、すごく貴重な経験でしたね。どちらかというと英国系の方がいなかったです。誰か踊りたい振付家はいらっしゃいますか?
小野: すごく欲張りなので、全部やってみたいんです。
首藤: 全部(笑)
小野: その中で自分がフィットしているものを見つけてみたい。今は自分がどのタイプっていうのを決めたくないんです。ちょっと欲張りすぎかも…。

−首藤さんも同じような時期はあったんですか?自分のものを探している期間。

首藤: やはりありましたよね。けれどもカンパニーの中では、オーガナイズされていて次はこの作品と決まっていて。ただし、僕はとても恵まれていて、カンパニーにいた最後の5年位、マシュー・ボーンのカンパニーで踊ったり、ベジャールさんのカンパニーで踊ったり、色々な経験をさせてもらえたので、その中で割と感覚が構築されていきました。

 
−どなたか特にフィットした振付家や作品はありましたか。

首藤: 特に、と言えばベジャールさんです。仕事をしてきたのが長かったですし。今はもう、フィットしたものしかやらないですね。振付っていうのは共同作業ですから。20代のころは言われた通りに無我夢中で踊ってきましたが、だんだん自分自身もダンスの中での経験が増えていくことによって、「音の捉え方はこうなんじゃないか」「ここの動きはこうした方がいいんじゃないか」という意見を自分から言えるようになったのは、30歳を過ぎてからかな。それが不思議と、出会った振付家は同じ時に同じことを考えている瞬間というのが多くて、「あ、この音はこうだよね」って言ったら相手も「そう思ってた」という風に、「つながる」瞬間があります。とにかく僕は出会いに恵まれています。感謝です。

−新しい振付家にどうアプローチしていらっしゃるか、ぜひ伺いたいです。

首藤: 新しい振付家と仕事をするときは、自分の経験をシンプルに体に入れた上で、立つことですよね。あまり情報を入れすぎると、こちらも構えてしまいますから。あまり情報を入れないことですよね、自分を信じるしかないと思います。
小野: 情報が多いので、わかった気分になる…錯覚することが多いんですけれど、それはただ「知っている」のであって「わかっている」わけではないのですよね。
首藤: 例えば先ほどお話したバリ島という土地についても、バリ島の話はたくさん聞いているし、情報もあるので知っていたつもりなんですけれど、実際に行くと、その土地の人の感じ方とか空気とか、その土地にいないと分からないですね。
バレエも同じで、実際にその劇場に行って、そこでおこなわれていること、観客はどう思っているのかという空気を感じたりするために、時間があれば劇場に舞台を観にいっています。そういった経験は自分自身のコアになってます。

―今回、オープニングガラ公演と「THE SONNETS」が同じ日なんですよね。小野さんは、「眠り」新国では初めてですよね。

小野: はい。
首藤: 全幕は踊ったことはないんですか?
小野: ないですね。
首藤: 決まったパートナーはいるんですか?
小野: 色んな方と組んでいます。
首藤: 作品によって?
小野: はい。今までで一番お世話になったのは山本隆之さん。本当にいろいろ教えてくださいます。
首藤: 「シンデレラ」や「白鳥」のときもそうでしたね。素敵なダンサーですよね。
小野: 今年は、福岡雄大さんが多いです。山本さんの後輩なんです。

−パートナーが変わるのは大変ですか?

首藤: パートナーが変わるのは楽しいよね。
小野: 確かに一回目より二回目の方が、お互いのことがわかって、うまくできたりしますけれど。
首藤: また他の人と組んで、その人に戻ると、もっと新しい発見があったりしますから。

―カンパニー在籍中は年間どのくらいの数公演があったんですか?

首藤: ヨーロッパツアーをいれると年間100公演あったときもありました。だいたい50から60はキープしてましたね。

−やっぱり本番を数多く踊ることは重要ですか?

首藤: 本番で得るものは大きいです。100回のリハーサルで分からないことが、1回の本番でわかったりすることがありますから。けれども、それでも今回のような新しい作品を作る時は、そのプロセスがすごく大事で、その段階を踏まないと本番にはなれないので、その時間もとても必要ですね。作った作品であれば何回も上演を重ねることはいいことですし、また年数を経て自分が人生を重ねたことによって、同じ作品でもまた違った感じで踊れると思います。だから、踊り続けてください!

−小野さん今回は「Shakespeare THE SONNETS」の二日目をご覧になるんですね。

首藤: 僕はジャンルで分けるのは好きじゃないんですけれど、いわゆる「コンテンポラリー」は、どう思いますか?
小野: 好きです。私はそんなにコンテンポラリー作品を踊ったことがないんですけれど、以前ナチョ・ドゥアトさんの作品を一つだけやらせていただいたことがあって、その時、すごく心地よかったです。
首藤: 彼も完全にクラシックがベースですものね。でもハードですよね。
小野: 本当は今回、2回観たかったんです。何もない状態で1回観て、観て考えて、幾つか情報を入れてからまた観るような観方が、一番好き。
首藤: 同じですね。僕も気になった作品は、時間があれば2回観るんです。よりクリアーになりますよね。パゴダはぜひ観たいです。

−小野さんパゴダは2回踊りますね(笑)ぜひご覧ください!

<首藤康之&小野絢子対談パート1を読む>

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