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2011年7月9日

10回目の上演となるレパートリー作品『蝶々夫人』:高校生のためのオペラ鑑賞教室

7月11日より6日間連続で、平成23年度高校生のためのオペラ鑑賞教室「蝶々夫人」を上演します。今年も首都圏を中心に約50校の生徒さんに、カットや抜粋のない、一般のオペラ公演と同じ全曲上演スタイルで鑑賞していただきます。
この栗山民也演出の「蝶々夫人」は2005年初演後、今回で記念すべき10回目の上演となります(本公演+鑑賞教室)。
多くのお客様の心を動かしてきた新国立劇場の「蝶々夫人」。鑑賞教室公演では、毎年来場者の8割以上がオペラ鑑賞初体験です。また、新国立劇場では特別支援学校の生徒さんも多く来場され、生の声、オーケストラの響きを全身で感じ取っていただいています。

今回、タイトルロールの蝶々夫人を演じる岡崎他加子さん、並河寿美さんに、お話を伺いました。


公演情報ページは下記をご参照下さい。
☛高校生のためのオペラ鑑賞教室『蝶々夫人』

2007年公演より  
【蝶々夫人】岡崎 他加子 【スズキ】大林 智子

平成22年度高校生のためのオペラ鑑賞教室・関西公演より
【蝶々夫人】 並河寿美 【ピンカートン】樋口達哉

Q1)蝶々さんを演じるのは何回目ですか?

岡崎)イタリアで初めて歌ってから、今までに70回ほど歌わせていただいています。中にはヨーロッパの演出家による、日本人にしてみるととても変わった演出も経験しました。何度歌っても素晴らしい音楽に感動し、そして高くて越えることの出来ない壁のような難しい作品だと思います。

並河)初めて歌ったのは1999年で、今回で10回目のプロダクションになります。
舞台で実際に歌ったのは13回目(前回まで)ですから、まだまだひよっ子ですね!


Q2)初めて観たオペラは?

岡崎)小学生の時に、ウィーン国立歌劇場の日本公演『フィガロの結婚』を急病の叔母の代わりに観にいったのが初めてのオペラです。母曰く、「子供なのに夢中で観ていた」と言う事ですが、公演後、近くのレストランに偶然現れた指揮者にサインをもらったことのほうが私の記憶に残っています。

並河)高校生の時、プッチーニの『ラ・ボエーム』が初めて観たオペラです。

Q3)蝶々さんが選んだ愛の形について、ご自身ではどう思われますか?

岡崎)現代に生きる自分が、彼女のように子供を残して自害することなど絶対に考えられません。
蝶々さんは、「子供の将来」の為に自分が消えることを選びます。ピンカートンとケイトに引き取られる方が子供の人生が豊かで幸せになるだろう、と。これは、たった18歳の若い女性による究極の愛の力と言えるでしょう。自分とは違う凄い力を持った、そんな女性になりきって演じたいと思っています。

並河)母親として、そして女性としての愛を、自分自身が置かれた立場で表したのが、蝶々さんの最終的な愛の形だったのではないかと思います。すべての希望は失われ、ピンカートンに対する素直で一途な愛が崩れ去った。愛を失ったことは、自分の命の灯が消える事を意味する程、蝶々さんの“愛”と“死”が隣り合わせのものだったのではないかと思っています。


Q4)高校生へのメッセージをどうぞ。

岡崎)多くのオペラ作品の中で、日本を舞台に一人の日本人女性の運命をここまで細かに描いた作品は偉大なイタリアのオペラ作曲家プッチーニの「蝶々夫人」の他にはありません。プッチーニは来日することなく、日本人の知り合いから伝統的なメロディーや風習などを学んで作品に織り込んだので、日本人にとって「?」と思うような場面もなくはありませんが、この作品は世界中で愛され、上演されつづけています。
新国立劇場の『蝶々夫人』の舞台には、瓦屋根や畳、日本庭園といった「日本的」な要素を使っていません。ですが、美しい音楽と共に心に迫る人間ドラマを通じて、高校生の皆さんと同年代の一人の女性が、約150年前にどのように生きて散っていったのかを、心の中で比べることができるはずです。
それから、オペラを特別なものだと思わずに観てみてください。「面白い」「なんか可笑しい」「オーケストラの音が凄い」等々、どんなことでも皆さんの心に「何か」が残ることを祈りつつ、頑張って歌いたいと思います。

並河)どこにいても、リアルタイムで世界中の情報を得ることが出来る現代とは違う時代を生きた蝶々さん。高校生の皆さんと同じ年頃の一人の日本女性の生き方を、自身の想いと共に観て感じて欲しいです。

☛チケット情報
全席指定 2,100円(税込)
お求めの際には、学生証をご用意ください。また、残席がある場合に限り、当日券として4,200円で一般(大人)の方も購入可(高校生以下2,100円)。お1人様1枚限り。

新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999