2010年10月26日
来シーズン2011/2012シーズンバレエ開幕作品がデヴィッド・ビントレー芸術監督振付で世界初演となる「パゴダの王子」に決定しましたのでお知らせします。
パゴダとは英語で「仏塔」のこと。語源的 には「神像の家」「神に属する家」「釈迦の住む家」などの意味を持ちます。初版は英国で名声を得たジョン・クランコにより構想が練られたバレエで、音楽はイギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンに委嘱され、3幕構成の「パゴダの王子」が誕生しました。1957年に英国ロイヤルバレエで初演、クランコはこのバレエに非常な愛着を持っており多くのバレエ団で何回も再演しましたが、英国ロイヤルバレエでは、結局レパートリーとして定着しませんでした。クランコの弟子でもあるマクミランは、この「パゴダの王子」の新演出を構想、ブリテンにも許可を取って物語性をさらに強めるなど、大幅な修正を行ったため上演まで数年間を要し、完成した新演出はマクミラン自身の60歳の記念として、1989年に英国ロイヤルバレエで上演されました。
この度は、ビントレー監督がストーリーを練り直し、全く新たな振付で新国立劇場バレエ団が世界初演します。ビントレーは歌川國芳の描いた浮世絵など日本絵画からもインスピレーションを得、物語のプロットにもビントレー独自のアレンジが加えられどなたにも親しみやすい展開に創り上げました。また作品の魅力の一つともいえるブリテンの音楽は、バリ島のガムランに影響を受けた魅惑的な響きで聴く者を惹きつけますが、この曲が全曲演奏されるのは今回が日本初となります。
前回ビントレー監督が新国立劇場バレエ団に振り付け世界初演された「アラジン」は海外からの注目を集め、海外バレエ団での上演も計画中。日本の新国立劇場バレエ団が世界へ発信する高い芸術性を持つことを示す好例であり、今回の「パゴダの王子」にも世界への発信という点でも注目が集まります。
稀有のストーリーテーラー、デヴィッド・ビントレーの世界初演バレエ作品「パゴダの王子」にどうぞご期待ください。
謹白
<ものがたり>
皇帝は息子の早すぎる死を嘆き、その悲しみからどうしても立ち直れずにいる。時は流れ、妹君のローズ姫に4つの王国の王が求婚する。皇妃である彼女の継母は求婚者たちの富や権力故に義理の娘の結婚を熱望するが、ローズ姫は結婚を拒む。そこへ5番目の王子が現れる。彼は実は継母の呪いで金のサラマンダにされたローズの兄だった・・・。ローズ姫は様々な試練を受けながらも、サラマンダとともに彼の王国パゴダにたどり着き、その地でこのサラマンダが長く会わなかった兄であったことを知る。妹と兄は力を合わせて王国を元の平和な地に戻そうとするのだが・・・。