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2010年8月6日

『ヘッダ・ガーブレル』稽古がスタートしました!

新国立劇場の演劇部門では、9月にスタートする2010/2011シーズンから、宮田慶子が芸術監督に就任します。その新シーズンの第一作として、ノルウェーの劇作家イプセンが著した『ヘッダ・ガーブレル』を上演いたします。
本日、全ての出演者・スタッフが一同に会した初めての顔合わせがあり、その後、さっそく台本の読み合わせが行われました。これより9月17日の初日に向けて、日々稽古を積み重ねてまいります。

これに先立って、先月13日、本公演の制作発表が開催されました。会見には、演出の宮田慶子、翻訳者の一人である長島確、そして出演の大地真央、益岡徹、七瀬なつみ、田島令子、山口馬木也、青山眉子が出席。多くの報道陣が集まる中、本作にかける意気込みや思いを語りました。

7月13日に行われた『ヘッダ・ガーブレル』制作発表会見の様子

 

宮田慶子(演出/次期演劇芸術監督)

いよいよ9月より、芸術監督の仕事を始めさせていただきます。その初めてのシーズンに、「JAPAN MEETS… −現代劇の系譜をひもとく−」というシリーズを企画しました。日本の演劇界がここまで来るのに出会って刺激を受け、そして大きな分岐点の役目を果たしてくれた海外の作品に、近代劇からの百何十年の蓄積を積み上げた今の私たちが、もう一度挑戦します。そうすることで、自分たちが今まで積み重ねてきたもの、そしてこれから先の未来に繋がなくてはいけないもの、それを自ら考えながら検証したいというのがこのシリーズの目的です。
『ヘッダ・ガーブレル』というのは、120年も前に書かれた作品ですが、人間の心の様を生き生きと非常に明確に描き出した作品として、イプセンの中でも代表作の一つとされています。最終的には悲劇的な結末が待っているのですが、そこに至るまでの登場人物一人一人の一筋縄ではいかない様子が描かれます。人間とは、こんなにも複雑な野望や欲望、愛情といった色々なものがこんがらがった状態で生きているのか…。イプセンが61歳にして、その面白さにもう一度目覚めた作品ではないかと考えています。これを過去の作品としてではなく、現代の作品として、生き生きと甦らせるために、舞台の上で存在感を発揮してくださる皆様に、何としてもと出演をお願いした次第です。
また、今回のシリーズは全て、原語から新たに翻訳することが目玉となっています。『ヘッダ・ガーブレル』では、ノルウェー人のアンネ・ランデ・ペータスさんが、ノルウェー語から日本語に翻訳し、そこに長島確さんがドラマトゥルグという立場で入ります。それから最終的に、私と長島さんで幾晩も討議を重ねるという非常に贅沢な形を経て、台本を作らせていただきました。
さらに、私の任期になって、“月に一度は新国立劇場に!”を掲げた、マンスリープロジェクトというものを企画しています。今回は『スザンナ』というイプセンの奥さんを描いたヨン・フォッセの作品を、今回ご出演の七瀬さん、田島さん、青山さんにお願いして、リーディング公演という形で上演します。ぜひ両方とも楽しみにしていただければ幸いです。


長島 確(翻訳)

イプセンというのは世界的に“近代劇の父”と言われていて、日本でも現在の演劇に至るまで大きな影響を与えた作家です。
私は、翻訳劇というのは特殊なものだと痛感していて、それは翻訳という作業自体が翻訳者の解釈や演出的な判断を含んでしまうからです。もちろん演劇には演出家というポジションがあるわけで、そこに翻訳者がどう入るべきか、積極的にいい共同作業ができないかということを考えてきました。
やはり演劇というのは共同作業ですので、その中で翻訳が原作の側にぴったりと付いて固まってしまうのではなくて、むしろ演出や稽古のプロセスの方に向けてどうやって開いていけるか。その中で今回は、アンネさんとの共同作業からスタートし、宮田さんとも演出の方向性、全体のコンセプト、あるいは非常に細かな役者に合わせたセリフのニュアンスまで含めて、回数を重ねて台本を練り上げました。
そうやって新しい台本ができましたが、実際にはこれから稽古が始まって、役者の皆さんの力で声になり体を通って、それで初めて生きてくるものですので、そこできっと新しい発見もあるに違いないと思っています。責任を感じていると共に、上演までのプロセスを楽しみにしています。

演出の宮田慶子

翻訳の長島 確

 

大地真央[ヘッダ・テスマン役]

いろいろな方から、ヘッダ・ガーブレルをやるようになったのか、ヘッダ・ガーブレルの役がついに来たか、と言われます。宮田さんの、新国立劇場芸術監督として第一弾の作品に声を掛けていただいたことを、とてもうれしく思うと同時に、非常に責任も感じています。でも、きっとこういう緊張感はいい結果を生むであろうということを信じて、21世紀のヘッダ・ガーブレルを作っていきたいと思います。


益岡 徹[ヨルゲン・テスマン役]

台本を読んでみて、登場人物一人一人についてはたと振り返ってみると、あまり人に見られたくないような人間の隅っこや裏側が日常の中で非常によく書かれていて、それぞれに毒のようなものがあることを感じました。シェイクスピア同様、イプセンというのは遠くにある山みたいに思っていましたが、今は自分でも何とか乗り越えたいと思っています。


七瀬なつみ[エルヴステード夫人役]

ずっとイプセンの作品は難しいのではないかと勝手に思ってきましたが、この何年かで上演されている作品を見たり、人に勧められて戯曲を読みだしたりしたところ、すごく面白かったんですね。そういうときに、出演のお話をいただきました。今回の作品もそうですが、静かに会話が進んでいるようで、中にうごめいている非常に激しいもの、毒のあるものが見え隠れする感じが非常に面白いなと思います。


田島令子[ユリアーネ・テスマン婦人役]

台本を拝読したところ読みやすく面白かったんですが、そういう作品は演じるのが大変だなと思ってしまいました。読んで完結したら困ってしまいますが、それぐらい面白く読ませてもらいました。私事ですが、宮田さんとは3回ぐらいご一緒していて、芸術監督になられた第一回目の作品に参加させていただけることを、光栄に思っています。


山口馬木也[アイレルト・レーヴボルグ役]

今回新たに翻訳された台本を読むと、より一層深みのある、しかも現代の人にちゃんと届くものになっていて、演じるのが楽しみな気持ちになる一方で、不安や緊張もあります。お客さんが芝居をご覧になって、不思議だなとか、色んなことを感じてくれたり、余白の部分で想像してくれたりしてもらえたらいいなと思いました。


青山眉子[ベルタ役]

女中のベルタは、今までは場面場面のつなぎ役という風に見ていました。しかし今回改めて台本を読ませていただくと、分かっているのかいないのか、裏でお茶を淹れながら聞き耳を立てているのかいないのか、全体を見ているのかいないのか、とても不思議な役どころです。そこをどういう風に面白くできるかなと楽しみにしています。


★『ヘッダ・ガーブレル』制作発表の様子は、以下のサイトでもご覧になれます。
 「シアターガイド」
 「@ぴあ」
 「げきぴあ」
 「しのぶの演劇レビュー」
 「ステージウェブ」(動画あり)
 「ORICON STYLE」
 「webザテレビジョン」

左より 山口馬木也、七瀬なつみ、大地真央、益岡 徹、田島令子、青山眉子