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2009年5月30日

「チェネレントラ」オペラトークの模様を掲載

6月7日(日)に初日を迎えるオペラ「チェネレントラ」。
豪華キャストが集結するこの話題の公演のオペラトークが開催されました。
この公演を指揮するデイヴィッド・サイラス氏と、音楽研究家で日本ロッシーニ協会事務局長の水谷彰良氏によるトーク。加えて、今回の豪華キャストをカヴァーするこれまた豪華日本人歌手陣が、名シーンを披露しました。
その模様の一部を抜粋してお伝えします。

「チェネレントラ」オペラトーク
5月30日(土)11:30開演 オペラパレス ホワイエ
<出演>
デイヴィッド・サイラス(指揮者)、水谷彰良(音楽研究家)、
新井鴎子(音楽構成作家)

デイヴィッド・サイラス氏  水谷彰良氏  新井鴎子氏

ピアノで演奏しながら解説をするサイラス氏

 

現在の稽古場の雰囲気は?―――

デイヴィッド・サイラス氏(以下、サイラス):
リハーサルは順調に進んでいます。素晴らしい歌手がそろっていますし、みんなとても調子が良いです。オーケストラとの舞台稽古に入るのをとても楽しみにしています。

ロッシーニと彼が生きた時代について―――

水谷彰良氏(以下、水谷):
ジョアキーノ・ロッシーニは1792年にイタリアのペーザロに生まれ、1868年にフランスのパリ近郊で亡くなった、19世紀前半を代表するオペラ作曲家です。生涯に39作のオペラを作曲しましたが、ロッシーニがオペラ作曲家として活動したのは1810年から1829年までの20年間です。
ロッシーニがオペラ作曲家として活動した時代は、ナポレオンがヨーロッパ大陸戦争を行い「イタリア全土をフランスが支配した時期」と、ウィーン会議でヨーロッパ各国に王政が復活した、いわゆる「復古王政期」に当たります。シューベルト(1797〜1828)と同じ時代です。ちなみにベートーヴェン(1770〜1827)の交響曲第5番と第6番は1806年に初演、第9番は1824年されましたが、ロッシーニはその間に34作のオペラを初演していたんです。

ロッシーニの音楽の特性について―――

サイラス:
まず、ロッシーニの音楽の幅というものは非常に広いものがあります。オペラ・ブッファと言いましても、それだけで奥行きの深いものですけれども、「チェネレントラ」はそれだけでなくオペラ・セリアの要素も垣間見える作品になっています。各歌い手に対しては非常に重みがあり、これによりこの作品に交響的な要素というものを加えています。

ロッシーニを指揮する難しさ、楽しさは―――

サイラス:
ほかの作曲家と同じようにキャラクターというものをいかに表現していくか、生の音楽なので、空中分解してしまわないか気を使う必要があります。また、このジャンルの音楽というのはやはり声楽家が主役だと思います。ですのでそこで指揮者が入ってこういう風に歌わなければいけないということはないと思っております。私は声楽家がそこでオープンにできるものに気を配って演奏をしています。そして、この作品の中の原動力、エネルギーというものはステージ上で生まれます。オーケストラというのはあくまでもそのエネルギーをいただいて、それを音楽として表現するのです。
実際この作品の難しさはアリアの中にもありますが、もっとも難しいのは重唱の部分だと思っています。この作品の中には頻繁にこれが出てきます。大勢の声楽家たちの、その才能、音量、テンポなどをどのように合わせていくか、その難しさというのがこの作品の特色の一つだと思います。

「ロッシーニ歌い」とは、どのような技術と特性をもっているのか―――

水谷:
厳密に言えば、「ロッシーニ歌い」や「ロッシーニ歌手」という言葉は間違いです。なぜならロッシーニを素晴らしく歌える歌手は、ヘンデルもモーツァルトも素晴らしく歌えるからです。チェチーリア・バルトリも、今回主演するカサロヴァも、ヘンデルやモーツァルトをロッシーニと等しく素晴らしく歌います。要するに先ほどベルカントの特色としてお話した特性を備え、あらゆる声の技術を駆使できる歌手が「卓越したベルカント歌手」なのです。逆に言えば、ロッシーニはベルカントの頂点に位置する作曲家ですから、ロッシーニを素晴らしく歌える歌手は最高のベルカント歌手といってよいでしょう。

演奏曲目
志村文彦:ドン・マニフィコのカヴァティーナ「わが子孫たる娘たち」
佐藤泰弘:アリドーロのアリア「深い神秘に支配される天の」
森山京子/五郎部俊朗:アンジェリーナとドン・ラミーロの二重唱「何か判らぬ甘美なものが」
ピアノ:デイヴィッド・サイラス(指揮者)

志村文彦氏

佐藤泰弘氏

 

五郎部俊朗氏   森山京子氏