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2009年4月16日

Noism09公開リハーサル&金森穣インタビュー
―「ZONE」創作の今を語る

第8回朝日舞台芸術賞舞踊賞、キリンダンスサポートを受賞するなど、日本のダンス界を牽引する存在となった、金森穣率いるNoism09が、6月りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館と新国立劇場による初の共同制作「ZONE」を上演します。
上演に先立ち4月10日新国立劇場にて、公開リハーサルと金森穣インタビューが行われました。

 

アカデミックにダンスを探求したい。そしてその対極も―

―「ZONE」でやりたいことは?

 クラシカルな作品と、原始的・ノマディックな作品を2部構成で上演したいと思っています。
 まずは、コンテンポラリー色を排して、クラシックを強く意識した作品を作りたい、ダンスをもっともっとアカデミックに探求したいということを考えていました。この作品がNoismの、ひいては日本のダンス界の教科書的存在になるような、そんな作品を作ろうと思った。16才までバレエレッスンを受けていた自分の中にはクラシックの技術が素地としてあるので、それも踏まえ、今回コンテンポラリーダンスをクラシックの延長上にあるものとして追求してみようと思いました。
 しかし、アカデミックに、クラシカルに、ということを追求しようとすればするほど、記号化しきれない人間の身体そのものの“におい”がどうしても出てきてしまう。身体のやわらかさであったり、ぬぐいきれない身体の曖昧さのようなものがある。そのうち、こういった人間の身体がもつ原初的なものを、クラシックの対極にあるものとして表現してみたいと思うようになりました。
 今は、この2つを並べる形で考えています。ただ、6月の公演までに気が変わってどちらか一方になるかもしれないし、もうひとつ何か新しいものができるかもしれない。まだわかりません。


あくまで「身体」。自分を追い込む先にあるものを―

―久しぶりの出演について

 今34才という年齢ですが、速度や強さが落ちる前にもう一度踊りたい、というのが一つあります。と同時に、アカデミックにダンスを捉えると言った時に、今のNoismのメンバーにクラシックの技術が充分にあるかというと、そうではない。であれば、クラシックの素地を持つ自分の身体を見せながら、他のダンサーと一緒にやっていくことが必要なのではないかと思うのです。この年で体のラインがあからさまになるタイツを履いてみんなと一緒に身体を追求していくというのは、正直しんどいです。ただ、理念や言葉ではなく、身体の次元でアカデミックに考えていくには、やはり自分を追い込んで、身体で追求して行かなくてはいけない。そして、逆にそうやって追い込んで行った先に、疲れてバタンと倒れた時のふわふわした感じだったりというノマディックな作品の方に通じる感覚を味わったりするわけです。あくまで「身体」なんですね。

 ただ、ノマディックの方はおそらく自分は出演しないと思います。こちらは作り手としてのチャレンジで、これまでにない曲、これまでにない振付をすることになります。言ってみれば、アカデミックパートは左脳、ノマディックパートは右脳で作るような感じでしょうか。厳格なサラリーマンが酔っぱらった感じというか、理性ではなくどれだけ赤ちゃんに戻れるか、バレエやダンスの言葉をどれだけ削ぎ落せるかを目指しています。この間スタッフの赤ちゃんが稽古を見ていた時があって、音楽が鳴り出すとそれに合わせて体を動かすんですね。理由があって動いているわけではない、けれど直感としてフラフラ動いている。これだ、と思いました。

―井関佐和子さんは両方出演しますか?

 そうなると思います。もし仮に3つめのパートができたとしても、出演することになるでしょう。

―サブタイトルの「陽炎 稲妻 水の月」とは?

 “見えるけど掴めないもの”という日本語の慣用句で、チラシをデザインした方が教えてくれました。これはまさに舞台芸術全般を表していますね。


今までで一番ハード。緻密さに対するハードルの高さゆえ―

―アカデミックパートを踊ったあと、ダンサーのみなさんがすごく疲れているように見えたのですが、ハードなのでしょうか?

 これまでのNoismの中で一番ハードだと思います。それは単にテクニックの難しさや体力や速度の問題だけではなくて、緻密さに対するハードルの高さゆえです。例えば足を出すライン(軌跡)をどれだけ緻密に一本のラインとして描けるか。すこしラインがずれていても勢いでやりきったから気持ちよかったね、というようなものではなくて、頭の中にあるイメージを忠実に再現できなければOKとしない、というのが今回アカデミックパートで目指しているところです。集中力が少しでも欠けるとできないですし、すべてがきちっと合ったらほんとにすごいです。

 

ストイックに考え抜かれた身体と、そこからはみ出る肉体の根源的な存在感の両極を表現しようとする「ZONE」。これまでになく振れ幅の大きいNoismをどうぞお見逃しなく!!

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