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2007年3月13日

演劇『コペンハーゲン』
シアタートークの模様を掲載しました。

3月7日(水)演劇『コペンハーゲン』終演後にシアタートークが開催されました。観劇後の興奮の残るなか、観客と演出家、出演者が集い、作品の魅力や役づくり、稽古場の裏話、後半は客席からの感想や質問が飛び交い、終始なごやかなふれあいの場となりました。その様子をほんの一部だけご紹介いたします。これからご観劇になられる方、もうご覧になってしまった方もぜひご覧ください。これを読めばコペンハーゲンでの“謎の一日”の真相にまた一歩近づけるに違いありません。
作品情報は→こちら

                                  左から、堀尾、鵜山、村井、新井、今井 (敬称略)

 

堀尾:『コペンハーゲン』を演出しようと思った理由は何だったんですか。
鵜山:この芝居は、3人というのがポイント、つまり2人の対話を見ている3人目(例えばこの芝居だと、ボーアとハイゼンベルクという2人の科学者の議論を見つめる妻マルグレーテ、ボーア夫妻の会話を聞いているハイゼンベルク)が2人にどのような影響を与えているのか。そのキャッチボールが同じく第三者であるという立場、演出の基本に通じるというか、原理的に楽しめるんです。しかもほぼセリフだけで表現するというのは、演出家として冒険しがいがあってファイトが湧いてきます。
堀尾:ロンドンで大ヒットしてチケットが売切れたり、多くの賞を獲得したりと、観客に受けている理由は何だと思いますか。
鵜山:歴史的に事実としてのコペンハーゲンでの“謎の一日”は何だったのかというサスペンス的な興味はたしかにあると思います。また原爆の脅威から、ヨーロッパは助かったという風に描かれていますが、日本人にとってはそうではない。広島や長崎のことがヨーロッパの「外」の出来事として客観的に描かれているのを見ると、また別の意味合いを持って伝わってきます。

堀尾:それにしてもこの芝居のセリフの量はすごいですね。
村井:他の2人は再演ですが、僕は初演なので一番大変でした。これまで演じた役のなかでセリフの量はベスト5に入ります。わけのわからなさはベスト1(笑)。
今井:初演で覚えたセリフは、最初一つも出てこなかったのですが、稽古が始まると筋肉記憶というか身体が覚えていて、どんどん出てくるんです。今回翻訳しなおしていたり、細かいところも変わっているんですが、初演のときのものがつい出てきてしまうんです。
新井:ボーアの妻マルグレーテは、触媒というか、観客の立場になって2人の物理学者の専門的な議論を日常の世界に引きもどすという役割ですが、2人の対話の中に入っていく感じは日によって全く違いますね。私は固定した演技をするのではなくて、その日のコンディションにまかせてしまう方なんです。でもやりとりのタイミングや緊張感の中でやらなければならないところもあるので、すごく気がぬけない芝居ですね。
村井:リズムがよすぎてもお客さんは気持ちよくて寝てしまうんです(笑)。ショックをどこかで与えないと、といっても物理的なものでなく意味上のショックを与えるということですが。
堀尾:でもこういう芝居はめったにお目にかかれないという感じがしますね。
鵜山:ウェル・メイドというか、本当によくかけている作品なんです。たしかにボーアとかハイゼンベルクといった馴染みのないカタカナもたくさん出てきて、源義経といわれればもっとすんなり入ってくるんでしょうが。でもよく出来ているけど難しいという面白さをぜひ楽しんでほしいですね。

 

〜〜〜〜お客さまからの質問への回答〜〜〜〜

ノーベル賞物理学者の役を演じるにあたって
村井:芝居の中に出てくる逸話は全部調べました。マンハッタン計画のことやドイツがなぜ原子爆弾製造に失敗したかというものや、ハイゼンベルク著『部分と全体』などいろいろ本は読みました。セリフの中でも意味がわかるというだけでなくて、ボーアがどうしてそのようなことばを口にするのか、また今回は、特に父性というか、ハイゼンベルクをいかに自分の息子のように、彼の痛みなどもわかるように、という考えでとにかく今までで一番勉強しました。
今井:物理学者のような知識を得るのは不可能です。僕は医者とか弁護士の役をよく演るんですが、本当に医学や法律のことを理解するのは不可能で、それなら俳優でなく医者とか弁護士がやればいいわけですよね。そうではなく、そこに流れている感情とか、自分が話す相手に対して、どのように納得させたいのかとか、どのように挑発したいのかとか、そういったことを頼りに演ります。もちろん基本的な理論の中身は把握しますが。

稽古場でのマルグレーテは、ボーアとハイゼンベルクのどちらが突っ込みやすい?
新井:どっちもどっちというか(笑)、いつも2人を頼りにしていて、助けてもらっています。村井さんはいつも冗談を言ってリラックスさせてくれます。今井さんはマイペースというか、自分のことをカチッと言ってくれます。2人それぞれのキャラクターがあって、稽古場ではすごく楽しめました。実際の芝居でも村井さんと今井さんのキャラクターが出ているかもしれませんね。


会場には、物理に携わっている方も多数ご来場いただいていて、エピソードの意味がよくわかって面白かったというご感想や、物理学を知らなくても楽しめるといったご感想もいただきました。
公演は3月18日(日)まで上演中です。この貴重な機会ぜひお見逃しなく。


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