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2007年2月13日

好評前売中!!演劇『CLEANSKINS/きれいな肌』
中嶋朋子、北村有起哉、銀粉蝶
全出演者インタビュー

 

海外の気鋭劇作家に新作を委嘱して初演する企画の第3弾は
ロンドン在住のパキスタン系イギリス人、シャン・カーンによる3人芝居
『CLEANSKINS/きれいな肌』。

英国の小さな町に住む母と息子のもとに、
行方不明だった娘がイスラム教徒となって帰ってきた……。

宗教や民族の違いによる闘争が絶えない世界を、身近で普遍的なテーマとして描く
カーンならではの人間ドラマ。
演出の栗山民也が「最強のキャスティング」と太鼓判を押す出演者に意気込みを聞いた。

 

中嶋朋子(ヘザー役)
自分の中の欠落をどうにか埋めようとしている家族

 台本を最初に読んだときは、宗教や民族のことを感覚で理解するのが難しくて、自分には遠いもののような気がしたんです。でも栗山さんに「これは家族の話です」と言われて、「あ、そうか、そういう深い着地点からは読んでなかったな」と気づきました。第一印象ではとっぴな部分ばかり目についたけれど、そうじゃないアプローチをすることで、逆に深い問題提起になる作品ではないかと。そういう視点で読み直すと、日常の描写の中にごく当たり前に、相手を信じる気持ちとか、自分に嘘をつかないこととか、むさぼるように探しているものとか、誰もが大事にしようとして指の間から逃しがちなテーマがあふれているんですね。それを稽古で一つずつ発掘していけたら、面白い舞台にできるのではないでしょうか。
 ヘザーも含めてこの三人って、それぞれ自分の中の欠落をどうにか埋めようとしていて、すごく寂しい家族でもあるし、ある意味ハングリーでもある。私が以前、新国立劇場でやらせていただいた『ガラスの動物園』にすごく重なるものを感じたんですが、作家の方はテネシー・ウィリアムズを読んだこともないとうかがって不思議な気がしました。やはり描いているものが普遍的だからこそ、似るんじゃないかなと。
 こういう題材だけに、固定観念を持って取り組んでしまうと、作品が持っているいろんな表情が出せなくなりそう。だから、稽古ではなるべく自由でいるように努めていきたいと思っています。

なかじま ともこ……1981年テレビ「北の国から」の蛍役に出演、2002年「遺言」まで同役を演じる。映画では86年「時計―アデュー・リーベル」、90年「TUGUMI」、91年「ふたり」など話題作に立て続けに主演、脚光を浴びる。88年、坂東玉三郎・演出「ロミオとジュリエット」ジュリエット役で初舞台。最近の主な出演作品に、舞台「オレステス」「道場寺一幕」「時間と部屋」、映画「ベロニカは死ぬことにした」「埋もれ木」、NHK朝の連続テレビ小説「天花」など。新国立劇場では「ガラスの動物園」に出演。



北村有起哉(サニー役)
シンプルだけどすごくタフなものを要求される芝居

 栗山さんとはこれまで二作やらせていただいて、両方とも密度の濃い、シンプルだけどすごくタフなものを要求される芝居だったんですよ。今回もそうなりそうな作品で、しかも海外の若い作家の新作をわざわざ日本で初上演する。それだけでワクワクするし、声をかけてもらえて光栄です。国によって人種や宗教問題の背景は違っても、人間の喜怒哀楽は一緒だから、役のハートをつかめれば臆することはないと思うんです。サニーはわりとイメージしやすいキャラクターですね。一言でいうと「ガキだな」という感じ(笑)。感情の起伏が激しくて、バランスが保てていない。でも家族愛はすごく感じて、そこがとっかかりになるんじゃないかと思っています。
 栗山さんという演出家の一番の魅力は、リーダーとして手綱を引っ張る腕力の強さですね。この人についていけば大丈夫だと思える。演出家としてやりたいことがちゃんと決まっていて、なおかつ遊び心がある方です。でも、それはあくまでも本にのっとったもので、変なアドリブとかは一切許さないんですよ。
 新国立劇場に出させていただくのは『かもめ』と『浮標』に続いて三回目ですけれど、今回は新国立のラインナップっぽくない、いい意味でお客さんを裏切る刺激的な舞台にしたいなと思っています。少なくともきれいな作品にしたくはないし、栗山さんも僕を選んでくれたからには、そのつもりはないんじゃないかと(笑)。その意味でも、やりがいを感じる作品です。

きたむら ゆきや……1998年、舞台「春のめざめ」(TPT)、映画「カンゾー先生」でデビュー。舞台・映画・テレビと幅広く活動、ジャンルや時代性の境界線に一切とらわれない表現力で注目される。主な舞台出演作品に「オレステス」「メタルマクベス」「小林一茶」「LAST SHOW」などのほか、映画では「長州ファイブ」「バックダンサーズ!」「TRICK 劇場版2」、テレビではテレビ朝日系「新・京都迷宮案内」、NHK大河ドラマ「義経」などに出演。新国立劇場では「かもめ」「浮標」に出演。現在、こまつ座「私ははだれでしょう」に出演中。




銀粉蝶(ドッティ役)
母親って賢くはいられないものなのかもしれません

 企画をうかがって、すぐ「演りたい!」と思いましたが、本を読んだときは正直腰が引けました(笑)。ハードルが高いどころか、棒高跳びでも越えられないんじゃないかと。どの作品もやる前はそれなりに怖いですけれど、これはひときわ怖い。でも、そういうものほど役者として演りたくなっちゃうんですよね。
 ドッティという役については、すべてが分かるというと嘘になってしまう一方で、すごく自分とシンクロするものがある感じがします。愚かな母親である部分とかね。私自身も日ごろから周りの人たちにいわれてるんですが、もしかしたら母親って賢くはいられないものなのかもしれません。特に母親と息子の関係って独特のものがありますよね。私は娘しかいませんけど、現実に息子のいる私の妹とか友達とかを見ていると、何かスペシャル感があるんです(笑)。そういう意味ではドッティは、母親らしい母親なのかも。だからといって、問題のある子供たちを抱えて悩んでいる母親とは捉えていません。彼女自身が問題児でもあるし、三人それぞれが重たいものを抱えていて、それが触れ合ってショートしたみたいな話じゃないでしょうか。
 いろんなことがドカーンと入ってるハードな芝居ですけれど、読んでいて、すごく面白くなりそうなシーンもいっぱいあるなと思ったんですよ。栗山さんも「これは喜劇だ」とおっしゃっていたと聞いて、よかったと思います。日本でやる意味がとてもある作品だと思うので、その魅力をちゃんと表現できるよう考えていきたいですね。

ぎんぷんちょう……1981年、生田萬とともに「ブリキの自発団」を旗揚げ。以降、看板女優として活躍。その後、劇団以外の舞台や映画・テレビなどにも幅広く出演、今や女優として、なくてはならない存在として多方面で活躍中。主な出演作品に「エデンの東」「三人姉妹」「パンドラの鐘」、映画「ハチミツとクローバー」「ピカンチ」、テレビ「花嫁は厄年ッ!」「タイガー&ドラゴン」「天使が消えた街」「繋がれた明日」など。新国立劇場では「櫻の園」に出演。

                                       (『ジ・アトレ』2月号より掲載)


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