新国立劇場について メニュー

2006年11月22日

審査員からのメッセージ

11月16日(木)開催の報道発表会に出席の審査員と、前日モントリオールから寄せられた荒川静香審査員のメッセージを紹介します。


遠山敦子(当財団理事長、審査員長)

 新国立劇場は、果たすべき二つの使命があると考えています。一つ目は、水準の高い公演を作り内外に発信していくこと。二つ目は、広く国民の皆様に親しまれる劇場にしていくことです。
 一つ目については、手ごたえを感じています。音響・舞台機構等に優れた劇場で、この9年間に合唱団をはじめ、創作面は大きく成長しています。しかしながら、二つ目の国民の皆様へのご理解が進んでいるかというと、やや低いと考えざるを得ません。タクシーに乗って「新国立劇場へ」と言っても、「歌舞伎ですか?」と聞かれ、「オペラ」と言っても、隣の「東京オペラシティビル」に行ってしまうことがまだまだ多いのです。
そこで、来る10周年を機に、多くの人がその名前を聞いて、ぱっとこの劇場が思い浮かぶような愛称を募集したいと考えました。
 アメリカ・ニューヨークのメトロポリタン・オペラは「メト(MET)」、ベルギー王立モネ劇場は造幣局跡地に建てられたことから「モネ」と名付けられ、ザクセン州立歌劇場ドレスデンは建築家の名前「ゼンパー」と呼ばれています。いずれも、その名前を聞けば、誰でもその劇場のことだと分かります。また、ウィーンで、シュターツ・オパー、フォルクス・オパーと言って、誰も迷うことはありません。
 多くの皆様に、この愛称募集にご参加いただきたいと思っています。(談)


森英恵(ファッションデザイナー)

 開場以来、何本ものオペラやバレエを観ており、この劇場を大変気に入っています。今年3月には「森英恵展 手で創る」と題した展覧会をここで開催いたしました。毎日通ってみますと、改めて設備の良さに感心し、またさわやかな気分にさせてくれる場所であることを実感いたしました。
 ただ、新国立劇場という劇場名は一般的な名前で、オペラ・バレエを上演する場所のイメージが薄いと感じておりました。また、友人に紹介しても、タクシーが隣の東京オペラシティビルに着けてしまいます。
ですから、愛称を募集するというお話を伺ったとき、大変良いアイディアだと思いました。
 親しみのある名前がつくと良いと思っております。(談)


荒川静香(プロフィギュアスケーター、プリンスホテル)

新国立劇場10周年記念「新国立劇場 オペラ劇場」愛称募集の審査員のお話をうかがい、心より光栄に思います。
 フィギュアスケートには、バレエやダンス、クラシック音楽といった文化的素養が求められます。特に、オペラとバレエはスケーターにとって多く学ぶものがあります。
 私は、2004年の世界選手権で、スケート人生の中で最高の舞台にしたいという思いが強かったのですが、その瞬間を飾るのは一番好きなこの曲しかないと思い、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」の曲で演技を行いました。好きな曲で最高の演技を行うために、トリノオリンピックでも同じ曲で演技し、皆様の応援のお陰で、金メダルを獲得することができました。
 新国立劇場が日本の現代舞台芸術の唯一の国立劇場で、世界の中でも本格的な劇場だとお聞きしております。その新国立劇場のよさをもっと広く皆様に知って頂き、より多くの方々が来場され、楽しんで頂くことを願っております。
 フィギュアスケートも同じですが、スケーターにとって観客の皆様の応援があってこそ、感動の演技が生まれます。観客の皆様にとって呼びやすく覚えやすい愛称が選ばれることを期待しております。
 皆様に広く愛称募集されることはとても素晴らしいことだと思います。私も微力ながらご協力させて頂きたいと思い、審査員をさせて頂くことになりました。ご推薦して頂いた皆様に感謝すると共に、ご成功をお祈り致します。
(モントリオールより、eメールにて)


伊藤翠(お客様代表、新国立劇場友の会「クラブ・ジ・アトレ」会員)

 私はこの近くで育ちました。東京工業試験所(*)の時代から遊んできたこの場所がオペラ劇場になると聞いたときは、大変うれしく思いました。
 開場以来、いろいろな演目を見てまいりました。この劇場ができたことで、私の生活、私の人生が、数倍豊かで楽しいものになったことに大変感謝しております。
 これからの10年に、一人でも多く、1回でも多く、お客様がこの劇場に足を運んでくれたならどんなに素晴らしいことだろう、と思っています。
 新国立劇場という名前は、多少硬い印象を受けます。ですから、親しみのある、皆様から愛される、一度も来たことのない人でも一度は行ってみようと思ってもらえるような、愛称をつけていただきたいと思っています。(談)

*東京工業試験所:現・独立行政法人産業技術総合研究所。1979年〜80年に現・茨城県つくば市に移転。


牧阿佐美(舞踊芸術監督)

 開場から9年間で、オペラもバレエも創作面は非常に伸びました。海外から参加したダンサーが世界各地でそのことを話題にしているので、この劇場は、外国の関係者の間ではよく知られた存在になりました。
 けれども、外国の方に「ニュー・ナショナル・シアター」と言っても、何をやっているところなのか、なかなか分かってもらえません。「では『ナショナル・シアター』は何をやっているところなのか」という話になって、色々と説明してやっと分かってもらえるのです。ですから、この劇場の愛称を募集するということはとても良いことだと思っています。
日本の方だけでなく、世界中の人に、その愛称を聞いてすぐに分かってもらえるような、そんな愛称をつけていただきたいと思っております。(談)