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2006年2月3日

「愛怨」オペラトークが行われました

2月17日(金)の世界初演を前に「愛怨」オペラトークが開催されました。作曲の三木稔氏をはじめ出演者から作品の魅力を語っていただいたほか、主役の二人に劇中歌われるアリアを披露していただきました。そのオペラトークの模様を一部ご紹介します。

 

 
「愛怨」オペラトーク
日時:2006年1月21日(日)
場所:新国立劇場中劇場

<出演者>
ゲスト:三木稔(作曲)/瀬戸内寂聴(台本)/大友直人(指揮)/恵川智美(演出)/
    釜洞祐子(桜子/柳玲(さくらこ/りゅうれい)役)/経種廉彦(大野浄人(おおのきよと)役)
司会:野村正育(NHKアナウンサー)
オペラ芸術監督:トーマス・ノヴォラツスキー
 
 

 


<音楽、演出の見どころ、聴きどころ>

大友:三木先生、瀬戸内先生と人生経験豊かなお二人の新作ということで、一番感心したのはものすごく情熱が込められている、エネルギーが作品の中にあるという事です。
合唱、琵琶を中心とする民族楽器、オーケストラということで全体の色調としてはかなりカラフルな音を聞いていただけるのではないかと思います。

恵川:舞台はとても日本的な色と、唐の華やかな色という色彩を意識したものを造ろうと思っています。もうひとつ、合唱、音楽の華やかな部分と、浄人と、釜洞さんが演じる双子の姉妹(桜子・柳玲)の演じわけなどを観ていただければと思います。寂聴先生のファンタジーを三木先生の時代考証がしっかり支えていただいて、虚実ないまぜにした舞台が造れればと思っています。


<役柄説明・抱負>

釜洞:恵まれて育った桜子と、非常に辛い運命のもとに育った柳玲、日本と中国の二つの国にまたがっての悲しい愛のお話。この二人をこれからどう演じるか楽しみにしておりますので、皆様もどうぞご期待ください。

経種:浄人の基本的なキャラクターとしては穏やかなのですが、やはり心に秘めた力が強いので難破しながらも長安への5年間の長い旅を成し遂げた。そこは日本人の穏やかながら心根はすごく強いという、本当にいい日本人だなぁというキャラクターが浄人ではないかなと思います。


<「愛怨」初演をひかえて>

瀬戸内:オペラの依頼が来たときは、びっくり仰天してしまいました。しかし、紙の上のものが息を与えられるということに関しては、言葉に出来ない喜びです。小説を書くということは非常に孤独な作業です。それをどんな人が読んでくださるかも分からないので。ところが、舞台芸術というのは、私が書いたものをみんなで力をあわせて膨らませていきます。いろんな人の力を結集してひとつの舞台を作るという喜びを教えていただきました。
私は83歳、三木先生は75歳。こんなことは世界に例のないことであります。しかも、これを大友さんの言葉によりますと、「非常に情熱的で若々しいオペラ」だということでございます。

三木:20世紀はオペラの冬の時代で、世界の作曲家たちはオペラを無視し、現代音楽はメロディを嫌いました。しかし、メロディなくして音楽になにがあるのかと思うのです。他の芸術にメロディなんかないじゃないですか。メロディは音楽の一番の特徴、武器ですよね。そんな武器、一番大切なものを捨てるのなら作曲家にはならないと思ってきました。オペラはストーリーとアリア(メロディ)でもっている。そういう気持ちを持っているものですから、寂聴先生のような多くの人の心をつかむ事の出来る方と組めて、最高のカップルが出来たと思っています。

三木稔、瀬戸内寂聴