研修所ニュース

公明新聞 掲載 第8期生修了公演「アンチゴーヌ」公演評のご紹介

1月10日~15日の間、新国立劇場リハーサル室にて上演された、

演劇研修所 第8期生修了公演アンチゴーヌの劇評が公明新聞に掲載されましたので、ご紹介します。


新国立劇場演劇研修所 第8期生修了公演 『アンチゴーヌ』

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撮影:小林由恵

 ジャン・アヌイの『アンチゴーヌ』は、ギリシャ悲劇『アンティゴネ―』を翻案して、1942年ナチス・ドイツ占領下のフランスにおいて書かれた。作品は、ドイツに協力するフランス・ヴィシー政権と、反対するレジスタンス派の対立を色濃く反映している。

 アンチゴーヌ(西岡未央・荒巻まりの、のWキャスト)は、死んで屍体を晒されている兄を埋葬しようとして衛兵に捕まり、クレオン(坂川慶成)の前に引きずり出される。息子であるエモン(永澤洋)との婚約を遂行して結婚すれば問題にしないと言われるが、アンチゴーヌは、生命をかけて自分の主張を守ろうとする。当時フランスでは、アンチゴーヌに対して熱狂的な支持があったという。

 養成所の所長でもある栗山民也は、『アンチゴーヌ』を現代日本の視点で演出をしている。大きな力や権力の前で、「個」をちゃんと保てるのか? それが栗山の今に向けた声である。そしてそれは同時に研修生たちへの叱咤でもある。演出に対して俳優としての個を保てるのか。ここではいろいろなレベルでの権力と個という対立が描れていて面白い。

 研修生たちは、栗山の意図に答えてみずからの意志で戯曲と演出に向かっているように見える。自立した役者を養成するのは難しいが見事に成功している。

 栗山の今回の演出は、個がどうやって大きな力に立ち向かうのかというポイントに俳優や観客をクリアに誘導している。研修生の公演といいながら、現代人の問題を鮮やかに抉ってみせる栗山の力量と姿勢は秀逸だ。



(2015年1月23日公明新聞 演劇評論家 今野裕一)

※公明新聞社の許諾を得て掲載しています


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