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『月・こうこう, 風・そうそう』山崎 一 紙面インタビュー

山崎 一

 

竹取物語を題材にした別役実の書き下ろし新作『月・こうこう,風・そうそう』。別役独自の静かな筆致が生み出すユーモアと批評精神に向き合う楽しみと覚悟とは─。別役作品の魅力に取り憑かれ、長年出演を切望してきたという山崎一が、稽古開始に向けた心境を語る。

 

 

インタビュアー◎ 鈴木理映子 (演劇ライター)

 

<新国立劇場・情報誌 ジ・アトレ 6月号掲載>

出演依頼を二つ返事で引き受けました
僕にとって、別役さんは別格の存在ですから


――別役作品への出演は、以前から切望されていたそうですね。

 

山崎  そうなんです。「別役さんの作品なら、絶対出してほしい。やらないの?」なんて話は劇場の方にも、しょっちゅうしていて。いつも「そのうち......」なんて濁されていたんですが、今回ついにお話をいただき、それも「新作」と聞いて、二つ返事で引き受けました。その時にはまだ、どんな内容、役になるのかも分からなかったんですけど、やっぱり僕にとって、別役さんは別格の存在ですから。
 

 

――山崎さんのこれまでの「別役体験」はどのようなものだったんですか。

 

山崎 別役作品は、僕が劇団(早稲田小劇場)に入る前の1980年くらいから観ています。文学座の『にしむくさむらい』や円の『雰囲気のある死体』の頃かな。以来ずっと大好きだったんですけど、出演したのは二年前のKERA(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)さんの『夕空晴れて』が初めてです。実は、『夕空晴れて』も当初は新作の予定だったんですけど、直前に別役さんが体調を崩されて、過去の作品になって。でも、やっぱりむちゃくちゃ面白かった。別役さんの王道というか、ちょっとしたボタンの掛け違いがいつの間にかとんでもない事態を生み出す、その過程の会話の面白さ、絶妙さ。なんの背景も持たない、説明されない人物たちが集まって、会話だけで独特の世界をフワッと浮かび上がらせ、スーッと消えていくような、あの感じがもう、大好きなんです。

 

 

――山崎さんは、別役作品の演出も手がけた宮沢章夫さんやKERAさんの舞台にもよく出演されてきましたね。


山崎 そうですね。宮沢さんもKERAさんも、別役さんからはかなり影響を受けていると思います。また僕が、宮沢さんがやっていたようなナンセンスコメディと不条理劇とが表裏一体だということ、その面白さに気づくことができたのは、やっぱり別役作品の体験があったからこそだとも思います。

 

 

――今回の『月・こうこう,風・そうそう』の台本については、どんな印象を持たれましたか。


山崎 別役さんの作品で時代劇っていうのが、まず、珍しいですよね。その辺りの背景も含めて、いろいろ読み込めないと難しい、分からないところもいっぱいあります。ですから、宮田さんがどういう演出をするのかも気になります。また、自分の出る場面でいうと、例えば、翁と媼と男との会話は、うまくハマれば笑えるだろうけど、難しいなぁと。ああいうのって、本当に絶妙なタイミングが要るんです。翁役の花王おさむさん、媼役の松金よね子さんとも舞台では初めてご一緒するので、どうなることか......もちろん、楽しみでもありますけどね。

 

 

――作家と演出家も初顔合わせですし、出演者も別役作品としては新鮮だと思います。


山崎 KERAさんだって色は全然違うけど、『受付』の演出(『吉田神経クリニックの場合』)で認められ、以後、別役さんに「君なら好きにやっていよ」と言われるようになったそうですから。あんまり気負ってもしょうがないですし、肩の力を抜いて、一生懸命頑張ります。



(やまざき・はじめ)
1995年出演したCMにてACC賞タレント賞を受賞。多彩な演出家の舞台に出演するほか、テレビ・映画でも幅広く活躍している。主な出演作にテレビ『かぶき者慶次』『花子とアン』、映画『駆け込み女の駆け出し男』『風に立つライオン』、舞台『グッドバイ』(讀賣演劇大賞作品賞受賞)『三人姉妹』『ブルームーン』『火のようにさみしい姉がいて』『太陽2068』などがある。10月に福島三郎 上演台本・演出『一人二役』、2017年ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出の『昭和三部作 完結編』の出演が控えている。

 

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<公演詳細>

月・こうこう,風・そうそう

2016年7月13日(水)~31日(日)

チケット好評発売中