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『月・こうこう, 風・そうそう』和音美桜インタビュー

和音美桜

 

竹取物語を題材にした別役実の書き下ろし新作『月・こうこう,風・そうそう』。別役独自の静かな筆致が生み出すユーモアと批評精神に向き合う楽しみと覚悟とは─。宝塚歌劇団出身でストレートプレイ初出演の和音美桜が、稽古開始に向けた心境を語る。

 

 

インタビュアー◎ 鈴木理映子 (演劇ライター)

 

<新国立劇場・情報誌 ジ・アトレ 6月号掲載>

今作でストレートプレイ初出演
正直怖くもありますが、
ぜひ挑戦したいと思いました


――和音さんは今作が初めてのストレートプレイ出演になりますね。

 

和音  もともと、「ストレートプレイに挑戦するなら日本の作家の書いた日本のお話に出たいな」と漠然と思っていたところに、このお話をいただいて。正直怖くもあるんですけどぜひ挑戦させていただきたいと思いました。普段、ミュージカルをやっていると、日本人の役ってあまりないんです。歌詞も英語を翻訳したものを歌っていたりするので、つくられたものをそのまま表現しているわけではないんですよね。さらに、演出も海外の方だったりすると、日本人としての解釈は共有できないことも多いので、日本人の書いたものを日本人が解釈して、演じてっていう作品があったらいいなと考えていたんです。
 

 

――ストレートプレイには、以前から興味を持たれていたんですか。

 

和音 八年前に宝塚を卒業して、ミュージカルの舞台に出させていただきながら、少しずつ台詞の面白さに気づけるようになりました。それまでは歌に頼りすぎていたというか、声が出ているだけで表現している気になっていたというか......。でも、人を感動させたり、ハッとさせるには、ちゃんと心情が動いていないといけませんよね。もともと私は感覚人間なんですけど、こうだろうなって掴む感覚に、ちゃんと台詞を分析する力がプラスされれば、もっとお芝居も面白くなるはずですし、そこをもっと勉強したくなったんです。

 

 

――その最初の舞台が、別役実の書き下ろしというのも、一筋縄ではいかない挑戦になりそうです。


和音 ホントですね。もし、出演を決める前から別役さんのことをよく知っていたら、尻込みしていたかもしれません。私は今回初めて、『象』や『マッチ売りの少女』も読んだんですが、別役さん独自の世界観に強く惹かれました。詩的だけど情緒に流れるわけでもないし、不思議な会話もどこか日常生活につながる説得力を感じさせたりするんですよね。また、想像していたよりずっと解釈の幅があるというか、演出家や俳優に渡してくださっているという印象も受けました。もちろん、だからこそ怖いんですけどね。それこそ、こうやって「感覚としては分かる」ものを、いかにきちんと分析し、構築していけるかが、今の私の課題です。

 

 

――出演者の皆さんもまだ、物語の結末はご存じないそうですが、ここまでの「姫」役の印象はいかがでしたか。


和音 いわゆる『竹取物語』の、おとぎ話の姫というよりは、もっと生身の人間に近い感じがします。別役さんが想像されている姫が、それこそ今、月明かりに照らされてフワンと見えてはいるんですが、実際にはどうなるか......。考えるのは楽しくても、やるのは難しいだろうなと思います。演出の宮田さんとは『パッション』でもご一緒させていただきましたが、役者が繊細になっている台詞や場面をすごく上手に拾って進めてくださる。だから今回は居残りも覚悟で頑張るつもりです。演劇界の友達には「すごくいい機会をもらったね」と言われます。それはもう、自分でも痛いほど感じていますから。


※次回は山崎一さんのインタビューを掲載します。





(かずね・みおう)
宝塚音楽学校を経て、2001年宝塚歌劇団に入団。『ベルサイユのばら2001』で初舞台を踏む。抜群の歌唱力で知られ、08年の退団後は、ミュージカルの舞台などで活躍している。主な出演作に、『レ・ミゼラブル』(ファンテーヌ役)、『レディ・ベス』『デュエット』『ルドルフ ザ・ラスト・キス』『三銃士』『ウーマン・イン・ホワイト』など。新国立劇場では『パッション』に出演。

 

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<公演詳細>

月・こうこう,風・そうそう

2016年7月13日(水)~31日(日)

チケット好評発売中