演劇芸術監督
小川絵梨子

2019/2020シーズンは、昨シーズンから引き続き芸術監督としての方針、三本柱を踏まえた上で、さらに新しい挑戦を重ねてまいります。
まず、シーズン幕開けからの3本の公演は、「ことぜん」というタイトルを掲げてのシリーズとなります。「ことぜん」とは個と全という意味で、個人と国家、個人と社会構造、個人と集団の持つイデオロギーなど、「一人の人間と一つの集合体」の関係をテーマとしています。個と集合体の関係性や、相互作用、その中での軋轢や葛藤を、三人の演出家がそれぞれの作品でそれぞれの視点から描いてまいります。最初の2本の演出には新国立劇場初登場となります五戸真理枝さん、瀬戸山美咲さんをお迎えいたします。3本目は私、小川が担当させていただきます。同世代の女性の演出家三人がこのシリーズに携わります。
続いて2020年の4月には、「フルオーディション企画 第二弾」となる、宮本研・作『反応工程』をお届けいたします。演出には俳優としても活躍されている千葉哲也さんをお迎えし、6週間を超えるオーディションの末、2018年の12月にキャストが決定いたしました。
7月と8月の公演は、シーズン幕開けに続くシリーズ企画となります。オリンピックとパラリンピック開催に伴い、ご家族で劇場に来て欲しいという願いを込め、「大人も子どもも楽しめる舞台」の二本立てシリーズをお届けいたします。7月には新国立劇場初登場となります、小山ゆうなさんを演出にお迎えし、8月には、これまでも新国立劇場にて大人も子どもも楽しめる舞台をつくって下さった長塚圭史さんの新作を上演いたします。前作に引き続き、コンドルズの近藤良平さん、松たか子さん、首藤康之さんの他、今回はさらにキャストが加わりパワーアップする予定です。
新シーズンは、昨シーズンには成し得なかった「シリーズ企画」を実施いたします。シリーズにすることで、新国立劇場ならではの大きな視点を描き出していければと思っています。
この他に第一シーズンからスタートした「こつこつプロジェクト」の稽古と、非公開での試演会を予定しております。
また、ロンドンにありますロイヤルコートシアターとの共同で、劇作のための長期ワークショップがスタートいたします。ロイヤルコートは、イギリスにおいて「劇作家のための劇場」と呼ばれる最も歴史と功績のある劇場の一つです。ロイヤルコートから企画担当者と劇作家が来日し、2019年-20年の間に、日本の劇作家たちと数回のワークショップを繰り返して新作を作りあげて参ります。ワークショップののちには、日本並びにイギリスでのリーディング公演を目指します。日本の劇作、ひいては演劇界の未来を豊かにする企画と考えております。
この他にもオペラ、舞踊との共同企画に加え、第一シーズンから引き続いてのギャラリープロジェクト(演劇のおしごとシリーズ、演劇噺、公演ガイドツアー)、視聴覚障害者向け観劇サポート等、演劇をより広くより多くのお客様に繋げて行くために邁進して参ります。

プロフィール

1978年、東京生まれ。2004年、アクターズスタジオ大学院演出部卒業。
06~07年、平成17年度文化庁新進芸術家海外派遣制度研修生。
10年、サム・シェパード作『今は亡きヘンリー・モス』の翻訳で第3回小田島雄志・翻訳戯曲賞受賞。
12年、『12人~奇跡の物語~』『夜の来訪者』『プライド』の演出で第19回読売演劇大賞優秀演出家賞、杉村春子賞受賞。
14年『ピローマン』『帰郷-The Homecoming-』『OPUS/作品』の演出で第48回紀伊國屋演劇賞個人賞、第16回千田是也賞、第21回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。
最近の演出作品に『スポケーンの左手』『RED』『夜想曲集』『ユビュ王』『CRIMES OF THE HEART ―心の罪―』『TheBeauty Queen of Leenane』『ファン・ホーム』『マクガワン・トリロジー』『出口なし』など。
新国立劇場では『OPUS/作品』『星ノ数ホド』『マリアの首 ―幻に長崎を想う曲―』『1984』『スカイライト』の演出のほか、『ウィンズロウ・ボーイ』の翻訳も手がけている。18年9月より新国立劇場演劇芸術監督。