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ブラバント公女エルザは、テルラムント伯から弟殺害の罪で訴えられる。窮地に陥ったエルザの前に現れたのは、夢に見た白鳥の騎士。騎士はテルラムントを倒し、エルザを救う。2人は結婚をすることになるが、騎士の出した条件は自分の素性を尋ねないことであった。テルラムントの妻オルトルートはエルザに疑念の心を植え付け、婚礼の夜、エルザはついに禁じられた問いを発してしまう。騎士は聖杯王パルジファルの息子ローエングリンと名乗り、去っていく。
10世紀前半、ブラバント公女エルザは弟殺害の罪で訴えられ、ドイツ国王ハインリヒの前で弁明を迫られます。しかし彼女は反論せず、見た夢を語り始めます。「悲嘆に暮れる私が神に祈ると眠りに陥り、やがて輝かしい騎士が現れたのです」「その騎士が私のために戦うことを望みます」(第1幕「エルザの夢」)。彼女がその場で神に祈ると、白鳥が引く小舟に乗った騎士が川岸に現れます。エルザを訴えたテルラムントとの決闘に勝利し、彼女の潔白を証明した騎士は、エルザと結婚することになりました。ただし、騎士は自身の素性を決して尋ねないことを条件とします。エルザは承諾しますが、後にテルラムントの妻オルトルートに疑念を吹き込まれ、結婚式の夜に騎士の素性を問い詰めてしまうのです。
ローエングリンはなぜ、名前と身分を隠さねばならなかったのでしょうか?彼が約束させたのは、自身が聖杯グラールを守る聖なる騎士の一人と知られれば、エルザを捨て、聖杯がある城に帰還しなければならなかったからです(第3幕ローエングリンの「名乗りの歌」)。ローエングリン自身もエルザを愛し、彼女を妻に迎えたいと願っていました。しかし、それは叶わぬ夢となってしまったのです。聖なる使命と愛の間に起こった悲劇は、人間の弱さと、神聖な存在との隔たりを浮き彫りにします。
- 【作曲】リヒャルト・ワーグナー/1846〜48年
- 【原作】ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ『パルツィファル』、
コンラート・フォン・ヴェルツベルク『白鳥の騎士』、グリム兄弟『ドイツ伝説集』 - 【台本】リヒャルト・ワーグナー(ドイツ語)
- 【初演】1850年8月28日/ワイマール/宮廷劇場
- 【制作】新国立劇場2012年
- 【構成】3幕/約3時間35分
- 【演出】マティアス・フォン・シュテークマン
- 【美術・光メディア造形・衣裳】ロザリエ
- 【照明】グイド・ペツォルト