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アルマヴィーヴァ伯爵は、町一番の美人ロジーナに一目惚れ。しかし、財産目当てでご執心の後見人バルトロのせいで、ロジーナはアプローチ不可能の箱入り娘状態。そこで伯爵は、お金さえもらえれば散髪から身の上相談、恋の仲介、手紙の代筆まで何でもする町の便利屋のフィガロに助けを求める。あの手この手でバルトロ家に侵入し、伯爵の想いはロジーナに伝えられるが、大混乱を巻き起こす。フィガロの機転でピンチを脱し、すったもんだの末ハッピーエンドで幕となる。
オペラ・ブッファといえば、最初に名前があがるのは「セビリアの理髪師」ではないでしょうか?これほど元気が出るオペラはなかなかありません。フィガロが最初に登場する場面は、前奏からしてまさに鳴物入り。「ラランラレラ〜」と歌いながらフィガロが現れると、拍手喝采で迎えたくなります。
「俺は腕の良い理髪師さ。誰もが俺を求めている」「ああ、何て幸せな、素晴らしい人生なんだ!」フィガロは自己肯定感がめちゃくちゃ高い男なのです(笑)。
「セビリアの理髪師」が初演されたのは、新しい階級が台頭してきていた時代でした。床屋のフィガロが頭の良さで貴族の結婚を助けるというストーリーは、当時の気分にぴったりはまるものだったのです。ロッシーニ・クレッシェンドと呼ばれる息の長いクレッシェンドを使った躍動感あふれる音楽は、ポジティブなエネルギーに満ちています。
ロッシーニのオペラはヒロインも魅力的です。籠の鳥のように閉じ込められているロジーナは決して諦めず、自分の運命を変えるために知恵を絞ります。そしてアルマヴィーヴァ伯爵への愛情が真実のものであることは、ロッシーニの繊細な、ニュアンスに満ちた音楽から感じ取ることができるのです。躍動感と真実の心。この二つが「セビリアの理髪師」に永遠の命を与えています。
- 【作曲】ジョアキーノ・ロッシーニ/1816年
- 【原作】ピエール=オーギュスタン・
カロン・ド・ボーマルシェ
『セビリアの理髪師、または無益な用心』 - 【台本】チェーザレ・ステルビーニ(イタリア語)
- 【初演】1816年2月20日/ローマ/アルジェンティーナ劇場
- 【制作】新国立劇場2005年
- 【構成】全2幕/約2時間40分
- 【演出】ヨーゼフ・E.ケップリンガー
- 【美術・衣裳】ハイドルン・シュメルツァー
- 【照明】八木 麻紀