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グリエルモとフェルランドは、美しい姉妹フィオルディリージとドラベッラとそれぞれ婚約している。アルフォンソにそそのかされ、ふたりは恋人の貞節について賭けをすることに。出征するふりをして偽りの別れを演じた後、別人に変装して姉妹を口説くふたり。姉妹の心は次第に揺らぎ、ドラベッラがグリエルモに、さらにフィオルディリージもフェルランドの口説きに陥落してしまう。入れ替わった2組のカップルの結婚式が行われるところに、軍隊(婚約者)の帰還が告げられる。
「コジ・ファン・トゥッテ」は、ナポリに住む美しい姉妹の婚約者2人が、恋人が心変わりをするかどうか試すという物語。音楽的な特徴は重唱によるアンサンブルです。6人の登場人物がシンメトリーな構図を作り、それが様々に形を変えていきます。恋人たちが旅立ってしまった(と信じている)姉妹は初めのうちは悲しみにくれていますが、やがて新しい求婚者たちに心をときめかせ、彼らを愛してしまうまでが描かれます。
オペラの幕開けでドン・アルフォンソは、女性の貞節を“不死鳥”に例え、そんなものは存在するはずがないと歌います。確かに愛は不変ではありません。例え自分にそれを誓ったとしても。だからこそ、新しい男性への恋心に悩むフィオルディリージのアリアは、このオペラでもっとも心を打たれる場面になるのです。
「コジ」は楽しいオペラでもあります。「少しは遊ばなきゃ!」というデスピーナの進言にドラベッラはすぐにその気になります。婚約者たちがいない間に気晴らしをすることに決めた姉妹は、新しい求婚者たちのどちらを選ぶかを打ち明け合うキュートな二重唱を歌います。
台本作家ダ・ポンテとモーツァルトは、永遠の愛が幻想であることを良く知っていました。それでもオペラ・ブッファはハッピー・エンドがお約束。恋人たちの愛の行方が気になるところです。
- 【作曲】ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト/1789~90年
- 【台本】ロレンツォ・ダ・ポンテ(イタリア語)
- 【初演】1790年1月26日/ウィーン/ブルク劇場
- 【制作】新国立劇場2011年
- 【構成】全2幕/約3時間
- 【演出】ダミアーノ・ミキエレット
- 【美術・衣裳】パオロ・ファンティン
- 【照明】アレッサンドロ・カルレッティ