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蝶々夫人
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蝶々夫人

純愛を信じた蝶々さんの短く、はかない一生の物語

蝶々夫人

あらすじ
弱冠15歳の長崎芸者、蝶々さんは、女衒のゴローの斡旋でアメリカ海軍の軍人ピンカートンの妻となる。「次に駒鳥が巣を作る頃には戻る」と言い残して本国に戻ったピンカートンを、蝶々さんは息子とともにひたすら待ち続ける。3年後、彼はアメリカ人の妻ケートを伴って長崎に帰ってくる。全てを悟った蝶々さんは、息子の将来を考えて彼をケートに託し、自身は武士だった父の形見の短刀で自害する。
ヒロインのご紹介
蝶々夫人

蝶々さんは迫りくる
悲しい現実を予感していた?

プッチーニのほぼ全てのオペラはヒロインへの深い共感を持って書かれています。中でも『蝶々夫人』は、オペラ全体が蝶々さんを描くことのみに費やされているといってもいいでしょう。蝶々さんは愛した男性に捨てられるヒロインであり、しかも彼との間にできた子供を手放さなければならなくなります。長崎を舞台にした、15歳の日本の少女とアメリカ海軍士官の悲劇において、ヒロインの蝶々さんが気の毒なのは、彼女とピンカートンの間に圧倒的な立場の差があったことでした。女性や立場が弱い者に対する差別や迫害は、今日に至るまでなくなっていません。それゆえに蝶々さんが人生を賭けた愛に敗れ死を選ぶときに、私たちも彼女の苦しみを共にするのです。
蝶々さんは、自分の結婚が危ういものであることを予想できなかったのでしょうか?蝶々さんの名アリア「ある晴れた日に」は、ピンカートンが帰ってくる日を信じて歌う内容ですが、彼女は本当にその日が訪れると思っていたのでしょうか?ピンカートンからの手紙を携えて訪れた領事シャープレスが彼がもう戻ってこないという事実を告げようとした時の、蝶々さんのはぐらかすような受け応えからは、彼女が迫り来る現実を予感していることが透けて見える気がします。
1904年にミラノ・スカラ座でおこなわれた『蝶々夫人』初演は歴史的な大失敗に終わりました。作品のいくつかの問題に加え、プッチーニの反対派が扇動した客席が騒ぎを起こしたためといわれています。しかしプッチーニは、このオペラへの自信を失うことはありませんでした。作品を手直しして数ヶ月後におこなわれた別都市での上演は成功裡に終わります。そして今日まで、『蝶々夫人』は人々に愛され続けているのです。

Digest Movie

  • 【作曲】ジャコモ・プッチーニ/1901~03年
  • 【原作】ジョン・ルーサー・ロング『蝶々夫人』に基づく
    デヴィッド・ベラスコの戯曲
  • 【台本】ルイージ・イッリカ、ジュゼッペ・ジャコーザ(イタリア語)
  • 【初演】1904年2月17日/ミラノ/スカラ座
    (改訂版1904年5月28日/ブレシャ/グランデ劇場)
  • 【制作】新国立劇場 2005年
  • 【構成】2幕/約2時間20分
  • 【演出】栗山 民也
  • 【美術】島 次郎
  • 【衣裳】前田 文子
  • 【照明】勝柴 次朗