オペラ公演関連ニュース
トーマス・ヨハネス・マイヤー氏ご逝去の報を受けて
バリトン歌手のトーマス・ヨハネス・マイヤー氏が逝去されました。マイヤー氏は先月(2025年11月)新国立劇場の『ヴォツェック』でヴォツェック役を演じていましたが、3回目の公演以後は体調不良から降板となり、体調の安定後に帰国されていました。あまりにも急な訃報に新国立劇場も驚きと深い悲しみに包まれております。
世界的歌手として活躍されたマイヤー氏は、新国立劇場へは2009年『ヴォツェック』タイトルロールでデビューし、続いて10年にはシーズン開幕公演『アラベッラ』でマンドリカに出演、15年『さまよえるオランダ人』ではオランダ人を歌い、深い音楽表現と艶やかな舞台姿で観客を魅了しました。2020年に『ニュルンベルクのマイスタージンガー』でハンス・ザックス役のロールデビューを予定していたものの、新型コロナの拡大により公演中止となり、21年7月に再計画された同プロダクションの東京文化会館公演も開幕直前に中止が決まって、同年11月に新国立劇場においてついにロールデビューを果たしました。その後、今年2月には『フィレンツェの悲劇』シモーネにもロールデビュー、11月に『ヴォツェック』タイトルロールでオペラパレスへ戻ってきました。この1年後には『ピーター・グライムズ』での再登場が予定されており、大野和士芸術監督との次の挑戦に意欲を燃やしていました。
バイロイト音楽祭やウィーン国立歌劇場といったヨーロッパの歌劇場と並んで新国立劇場にも度々登場していたマイヤー氏は、文学や哲学にも造詣が深く、それがオペラの深い解釈と表現に繋がる一方で、日本文化にも傾倒していました。日本の多くのファンがマイヤー氏の登場を楽しみにしていたところですが、あまりにも突然の別れとなってしまいました。
トーマス・ヨハネス・マイヤー氏のこれまでのご功績に対し改めて敬意と感謝を示し、謹んでお悔み申し上げます。
なお、『ピーター・グライムズ』の新キャストにつきましては、決まり次第、発表させていただきます。
芸術監督 大野和士からのメッセージ
トーマス・ヨハネス・マイヤーさんが、56歳という若さで急逝されたことに、新国立劇場の関係者一同、大変な衝撃を受けております。彼の長いキャリアの最後のご出演は、新国立劇場の今年11月のリチャード・ジョーンズ新演出での『ヴォツェック』でした。私自身は『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のハンス・ザックスでもご一緒しましたが、朗々とした歌声はもちろん、役柄作りへの真摯な姿勢、お人柄に魅了されました。
『ヴォツェック』では、心理的に大変深く響く声、演技的にも細心の動作で、役柄の複雑な性格を見事に表し、新国立劇場での初演を含めた、この役の80回にも及ぶ集大成を新国立劇場の舞台で果たしていただいたことは、私たちにとりまして大変な名誉なこととして語り継がれるでありましょう。
まだまだ、ご一緒の舞台ができると信じておりましたので、本当に残念でなりません。
心からのお悔やみを申し上げます。
大野和士
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