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「マノン・レスコー」演出 ジルベール・デフロ インタビュー

『マノン・レスコー』を演出するのは、オペラ界の巨匠ジルベール・デフロ。IMG_2789-001.JPG
5月『カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師』では、静と動の演出で作品の本質に迫る名舞台を見せてくれた。
2015年、再び新国立劇場で創り上げる『マノン・レスコー』の舞台について、大いに語った。
<ジ・アトレ9月号より抜粋>

  

白い空間と赤い砂漠
豊かさを象徴する
ゴールドのドレスをまとったマノン



     

─2015年3月に『マノン・レスコー』が、ついに上演されることになりました。

デフロ(以下D) とても幸せです。『マノン・レスコー』はベルリン・ドイツ・オペラからのプロダクション・レンタルですから、上演するには舞台セットや衣裳を借りなければなりません。それにもかかわらず「もう一回やろう」と言ってくださるのは、本当に特別なことです。

写真を拝見すると、白が印象的な舞台ですね。

D ええ。最終幕が赤い砂漠の場面で終わるので、それ以外の場面は白い空間にしたのです。そして、マノンはジェロントの寵愛を受けるようになったあと、豊かさを表すためにドレスの色をゴールドにしました。舞台には鏡とベッドがあります。私は、登場人物を特定の物で象徴させようといつも思っていますが、マノンがどんな女かを考えて思い浮かんだのが、鏡とベッドでした。美しさを表す鏡と、官能的な面を象徴するベッドです。

この作品の舞台は、太陽王ルイ14世の後の、開放的で贅沢な生活がもてはやされた、デカダンスな時代のフランスなのです。 

_CHK8731.JPG2011年3月舞台稽古より

 

プッチーニの出世作である『マノン・レスコー』の音楽は、若さがあふれ、とても情熱的ですね。

 

D そうですね。原作のプレヴォーの小説に忠実なのはマスネの『マノン』の方だと思いますが、プッチーニは愛の情熱をよりクローズアップしています。情熱的な音楽はもちろん演出に影響しますよ。といいますか、プッチーニの音楽は、物語の身体的な動作にぴったり合った小節数で書かれているのです。そして感情的にもしっくりきます。実に見事です。『マノン・レスコー』でプッチーニは、愛の二重唱を中心に描いています。物語が進むにつれて、マノンとデ・グリュー二人の心の孤独さに焦点が当たり、第4幕はとうとう登場人物がマノンとデ・グリューの二人だけになります。二人だけで一幕全部をやりきってしまうオペラは『マノン・レスコー』だけでしょう。プッチーニがいかに男と女の情熱を描きたかったかの証明でしょうね。

 

演出する際に、着想の中心となった場面はありますか。

D どの作品でも、私にとって核心となる場面は......全場面です。もちろん、タイトルロールのマノン・レスコーが大事ではありますが。これは女性の心変わりと、その代償をかえりみなかった女性の物語です。彼女はお金が好きだったのではなく、お金で何ができるかに興味を持ったのです。とても今日的だと思いますね。自分は美しくありたい、みんなに好かれたい、男を弄びたい......そんな望みの中で、しかし退廃的なお金に頼ってはいけないということに気づかなかったのです。一方、デ・クリューも彼女を自由にするためにお金を差し出します。当時のフランスはすべてがお金で買えた時代なのですよ。マノンはいわゆるファム・ファタール(運命の女)です。この女を愛すると命がけになることがわかっていても、飛び込んでしまう。男はどうしてそうなのでしょうね(苦笑)


 

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