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オペラ「アラベッラ」指揮 ベルトラン・ド・ビリー インタビュー

世界的な名オペラ指揮者 ベルトラン・ド・ビリーが、ついに『アラベッラ』新国立劇場に初登場!
忙しい稽古の合間をぬって、『アラベッラ』の作品の魅力や公演への期待を語った。 

 


 

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リヒャルト・シュトラウス生誕150年の節目に、5月22日から上演される新国立劇場『アラベッラ』を指揮するのは、ウィーン国立歌劇場等で活躍し、国際的な名声を博するフランス人オペラ指揮者ベルトラン・ド・ビリー。

 

パリ生まれのド・ビリーは4歳で指揮者になる決心をするが、両親の反対にあう。しかし、14歳の時、両親を説得し、音楽の道へ進み、パリ高等音楽院で学ぶ。ヴィオリン・ヴィオラ奏者のキャリアを積むかたわらで、独学で指揮を学び、オーケストラ指揮者デビューを果たした後、オペラの指揮者を目指す。

 

「『アラベッラ』に登場するズデンカは私のヒーローです」と、リハーサルの合間のインタビューで、ド・ビリーは語る。「『アラベッラ』は、1860年のウィーン社会を描いたトラジコメディ(悲喜劇)です。お金に窮した両親が長女アラベッラを金持ちの男に嫁がせ、破産をまぬがれようとします。妹のズデンカは金銭上の理由で男装させられていますが、家族のため、お金のため、敬愛する姉のため犠牲をいといません。しかし、想いをよせる士官のマッテオが身近にいるので、彼女の苦悩は募ります。この物語の中で、心情が一番大きく変化するのはズデンカだけです。彼女は本当にけなげな女性です。」

 

ド・ビリーは、又、R.シュトラウスの有名なオペラ『ばらの騎士』や『サロメ』と異なる、歌詞、音楽が始終流れる『アラベッラ』の独特の魅力に触れ、「第一に、この作品には序曲による前置きがありません。初っ端から、『金が無い』『どうしよう』とドラマの核心へ勢い良く迫ります。前置きの長いワーグナーの楽劇『ラインの黄金』と対照的です。第二に、オーケストラが室内楽的に響くよう、"ソフト・ピアニッシモ"が随所に見られ、登場人物、場面を象徴する主題が叙情的に鮮明になるよう工夫され、ドラマの困窮感は和らぎます。」と情熱的に語る。

 

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『アラベッラ』オーケストラ稽古にて

ド・ビリーは、1991年、26歳でスペインのオヴィエド芸術祭でヴェルディ『椿姫』を指揮し、オペラ指揮者としてデビュー、その後、ヨーロッパ、米国の歌劇場で、グノー、ヴェルディ、プッチーニ等の作品で成功を収めた。又、ウィーン放送交響楽団で音楽監督を務め、2007年と2008年に彼のオーケストラを率いて日本公演を行い、ドビュッシーの交響詩「海」やベートーヴェンの交響曲第5番を演奏した。オーケストラとオペラの経験が豊富なド・ビリーにとって、『アラベッラ』は[難しいが、やりがいのある作品]。

 

ド・ビリーは新国立劇場での初仕事に意欲を燃やしている。彼曰く、「新国立劇場は世界一流のオペラハウスの1つです。ここでは、芸術の質の向上に全力を注いでいます。だから、演目内容が素晴らしい。」今回初めて共演する東京フィルハーモニー交響楽団とは、息があい、リハーサルから手応えを感じている。「オーケストラの質が高く、楽団員全員、一体となって練習に打ち込むので、どんどんリハーサルがすすみます。これにはビックリしています」と、ド・ビリーは誉める。「コンサートマスターが曲を深く理解してくれています。短いリハーサルの期間に、オーケストラの奏でる音は、もう既にウィーンのサウンドに近くなっています。」

 

ド・ビリーにとって、東フィルとの初顔合わせは、美人との巡り合いに等しい。[まるで素晴らしい女性に遭遇した気持ち]なのだそうだ。

 

ド・ビリー指揮、東フィル演奏による新国立劇場オペラ『アラベッラ』に期待が高まる。

 

文:山崎伸子

 

 

 

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