高校生のためのオペラ鑑賞教室 ラ・ボエーム La Bohème Giacomo Puccini

ABOUT “Madama Butterfly” 作品解説

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プッチーニ作曲の甘く切ない永遠の青春オペラ『ラ・ボエーム』。詩人ロドルフォとお針子ミミとの純愛と、画家マルチェッロとその恋人ムゼッタの恋、そして19世紀パリの若者たちの生活を全4幕、起承転結の流れで描いた世界的人気作品です。『トスカ』『蝶々夫人』と並びプッチーニの三大名作オペラともいわれています。有名なアリア「冷たい手を」「私の名はミミ」「私が街を歩くと」など、プッチーニならではの甘美な音楽が盛りだくさんで、誰しも心打たれるロマンティックな作品です。

『ラ・ボエーム』が初演されたのは1896年、イタリア・トリノの王立歌劇場でした。オペラのもとになったのは、19世紀フランスの小説家アンリ・ミュルジェの小説『ラ・ボエーム(ボヘミアン)生活の情景』。貧しい生活の中で明日の成功を夢見る芸術家の卵たちの物語は、若きミュルジェの境遇そのままのもの。これをオペラ化したプッチーニの『ラ・ボエーム』は完成まで3年余りを費やす難産で、ミミが死ぬ最終場面を完成させたプッチーニは、感動のあまり立ち上がり、子どものように泣いたと言われています。

『ラ・ボエーム』の幕開けは、貧しい屋根裏部屋で暖をとることもできないわびしい生活から一転、あっという間に恋に落ち、クリスマス・イブのカルティエ・ラタン(ソルボンヌ大学等が集まる、パリの学生街)、人生の喜びに満ちた賑わいに舞台が転換する、ドラマティックな展開です。新国立劇場で上演する粟国淳演出も、パリの街を俯瞰するような豪華な舞台美術が特徴。このコントラストが、後半の恋人たちの悲しい別れ、若者たちの熱く静かな友情、ミミの死といった数々の悲劇的シーンを切なく描き出します。

1996年にブロードウェイで初演され、伝説的ヒットとなったミュージカルの名作『RENT』は、オペラ『ラ・ボエーム』の物語、音楽をもとにし、現代版にしたものです。世界の若者に熱狂的に受け入れられた『RENT』の原点『ラ・ボエーム』は、高校生の皆さんにも圧倒的な感動をもたらすこと間違いありません。

ジャコモ・プッチーニ(1858-1924)
プッチーニはイタリア・トスカーナ州のルッカで宗教音楽家の家系に生まれました。ヴェルディの『アイーダ』を観たことでオペラに開眼し、オペラ作曲家を志すようになります。ミラノ音楽院に学び、一幕物オペラコンクールに応募した作品が上演されたことを機に、出版社リコルディの社長ジュリオ・リコルディに注目されリコルディ社の委嘱でオペラを作曲するようになります。第3作の『マノン・レスコー』で大成功を収め、『ラ・ボエーム』『トスカ』『蝶々夫人』といった代表作が誕生しました。20世紀に入ってから作曲した『三部作』(『外套』『修道女アンジェリカ』『ジャンニ・スキッキ』)の『外套』は、20世紀初頭のイタリアの潮流“ヴェリズモ・オペラ”(写実的で生々しい感情表現を盛り込んだオペラ)の影響が色濃く表れています。最後のオペラ『トゥーランドット』作曲中に急死したため、『トゥーランドット』は未完成の遺作となりました。