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「愛の妙薬」は、ベルカント・オペラを代表する作曲家ドニゼッティの人気オペラ・ブッファ(喜劇)。偽の惚れ薬『愛の妙薬』をめぐる、コミカルでちょっぴりホロリとする恋の物語で、誰もが幸せな気持ちになれる作品です。映画やテレビなどでもおなじみの名曲「人知れぬ涙」をはじめ、魅力的なナンバーが盛りだくさん。オペラ初心者の方にもお勧めです。 初演は1832年、予定していた作曲家が現れず困っていたミラノのカノッビアーナ劇場が急遽新作の作曲を依頼したところ、ドニゼッティはわずか2週間でこの作品を完成させてしまいました。あっという間に書き上げたにも関わらず、楽しいだけでなく感傷的要素と深みを兼ね備えたこの作品は大成功、新聞批評は「音楽は最初から最後まで美しい」「ドニゼッティ万歳」と絶賛し、瞬く間にイタリア中で上演されました。 その後、ベルリン(1834年)、ウィーン(1835年)、ロンドン(1836年)、ニューヨーク(1838年)、パリ(1839年)と次々に国外でも上演され、現在では世界中のオペラ劇場で上演されるオペラのスタンダードとして定着しています。 『愛の妙薬』の魅力は、どの時代、どの世界にも共通する愛と幸福を求めて葛藤する若者の姿が描かれている点にあります。高飛車ながら本当は優しい娘と、間が抜けているが純粋な心を持った青年が、偽の惚れ薬『愛の妙薬』によって結ばれる物語はあらゆる人々の共感を呼びます。それが名曲「人知れぬ涙」など美しくも哀愁ただよう音楽に彩られることにより、心あたたまる名作として世界中で親しまれてきたのです。 |
ガエターノ・ドニゼッティ Gaetano Donizetti(1797〜1848年)
「愛の妙薬」の作曲家、ガエターノ・ドニゼッティは北イタリア、ベルガモの貧しい家庭に生まれました。職人の5人目の子供だったので教育を受けるのは難しかったのですが、運よく慈善音楽学校が作られ、そこで音楽教育を受けることができました。21歳でオペラ作曲家デビューを飾ったドニゼッティは、生涯で70にのぼるオペラを書きましたが、現在でも「ルチア」「愛の妙薬」「連隊の娘」「ファヴォリータ」といった彼の傑作は途切れることなく世界中で上演されています。ドニゼッティは19世紀のイタリアを代表するベルカント(美しい声)オペラの作曲家で、人間の声の美しさを堪能できる作品を数多く残しています。